攘夷志士丸一日指導教室 ページ4
「諸君!聞いてくれたまえ!此度、攘夷志士としてまだまだ未熟な我々を一日指導してくれることになった、坂田銀時と鬼塚Aであるぞ!!」
「ふざけんなァ!!」
「がふぅっ」
自慢げに紹介した桂様に社長がローキックする。くの字に体が反り、そのまま倒れ込んでしまった。
桂様を見下すようにして、社長が言う。
「てめぇは何回俺を巻き込みゃ気がすむんだよ!おまけにAまで巻き込みやがって!切腹のかわりに髪切れやァ!!」
「誰がヅラだ!」
「言ってねーよ一文字もっ!!」
まったく会話が噛み合わない。
まず、桂様は人の話を聞かないお方なのだろう。会話するたび社長が苛立つ理由がわかった気がする。
その二人のやり取りを、他の攘夷志士たちが生暖かい目で見守っている。よくあることなのだろうか。
すると、そのうちの一人がこちらに気がつく。怪訝そうに眉を潜め、
「あの、桂さん」
と口喧嘩中なのに声をかける。
「いだだっ髪を引っ張るな銀時!……で、なんだ?」
「あの女はいったい誰です?攘夷志士だろうと、神聖なこの場所に女を入れるのは……」
「神聖」
ぐるりと部屋を見渡すが、神聖という要素はまったくない。
集合の際は古い旅館の一室を借りているそうだが。壁と襖の紙は剥がれているし、畳は二畳無くなっているし、押し入れの戸は壊れているし。――神聖ではない。
まぁ、この場合は意味が違うからいいか。
乱れた髪を整え、仲間と向かい合う。その眼差しはいたって真剣なものに変わっていた。
「一理あるが、女人を差別するような発言は控えろ。そして、A殿はこの銀時に育てられた娘……少なくとも、おまえたちを鎮圧するほどの力はある」
ごくりと固唾をのみ、すみませんと謝る。首を振ってその謝罪を受け入れた。
一度たりとも桂様に剣を振るう姿を見せてはないけど、でも、社長に育てられたから……という強い信頼はなんだか嬉しい。
「桂様はよいお人ですね」
と呟くと、すっかり放置された社長が「そうか?」と不思議そうにする。
「素敵ではないですけど」
「ま、そうだろうな」
「社長はわたくしの腕を認めていますか?」
「鬼塚Aを認めてるよ」
わざわざ名前を呼んでくれた社長の横顔は、私の顔が熱くなるほど、とても誇らしげだった。
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