19.相合傘 ページ19
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自分ではよく頑張ってここまで走れた方だとは思う。
家までは後5分ほど。
ぜーぜーと息が上がってきて、
流石にここまでが限界だと思って一旦走るのを辞めて歩き出す。
学生の頃みたいにずっと長く走っていられない。
歳をとるって辛いなあ、
なんて悲しくなった。
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「冷たっ、」
お風呂上がり？って人から聞かれてもおかしくないくらいに髪の毛はびしょ濡れ。
着ている洋服も悲惨な状態になってしまっている。
雨で濡れた前髪から滴る雫が目の中に入ってきた。
このままにするともっと目の中に入ってきてしまいそうだったから分けるほど長くはない前髪を横に流す。
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「.....え、」
うるさいくらいにザーザーっと音を立てる雨音が
私がいる所だけ急に静まった。
雨が止んだわけでは無い。
だって目の前に出来ている水溜まりにはこれでもかってくらいに水量が増していくのが目に見えている。
「なにしてんの、風邪引くよ」
水溜まりの方に向けていた目線を上にあげると
ビニール傘を少し前に屈めるよう持ち、私に雨が当たらないようにしてくれている。
「京本.....さん？」
驚いた。
まさかあの京本さんが私に話しかけてくるなんて予想もしてなかったから。
本当にビックリしすぎて足がすくんでしまう。
そんな私を見て
京本さんが困った顔で目を細めると、
早く入りな、と私の肩を引き寄せた。
「あの....京本さん、濡れちゃいますよ」
「別にいいよ」
ずっと私の方に傾けて差してくれる傘。
そのせいで京本さんの反対側の肩は雨に打たれて濡れかかっていた。
それが申し訳なくてそう言ってみたんだけど
傘の角度は一切変えることなく私の方をチラッと見ては眉を下げて笑った。
なんだろう、
胸がドキドキしてる。
こんなにも近くで京本さんの顔を見たのはこれが初めてかもしれない。
それが世間で俗にいう相合傘。
この歳になってするとは思わなかった。
しかもその相手が京本さんっていう。
人生で一度も異性と相合傘なんてした事がなかった私は尚更この状況に困惑していた。
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作者名：つくね
| 作成日時：2021年5月26日 15時
