【龍ﾈ申】あのね、好きかも【短編集】 (ページ4)

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ね、練習だからさ　#15 ページ4

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「A選手、こんにちはー。」

「え、なんすか」

なんでもない、ただの練習終わりの日。

練習の見学に来ていた、かつて共に日の丸を背負った同期を捕まえて拳を向けた。
マイクを握ってるような、そんな拳を。

「…いつか来る日のインタビュー、の、練習に付き合ってあげようと思って」

「え、なんて？(笑)」

いつか来る日、なんて。

今、俺たち選手を影でサポートしてくれる側に回ったコイツには、インタビューなんか来るはずがないんだけど。

これは、そんなちょっとした悔しさから来る、Aへの意地悪、である。

嫌な顔ひとつせず、気まぐれの構ってアピにも付き合ってくれるコイツに甘えきっているのは俺です。

「はい、じゃあ最初の質問ですねー」

「勝手に始まったんだけど」

ほら。
今日もまた、絶対ないでしょ、なんて笑いながら俺のおふざけに付き合ってくれるAが愛おしくて。

チョロくて、甘くて、心配になってたりする。

「…好きな、タイプは？」

「…ええ？(笑)
なにそれ、ウケる」

「お決まりの質問だろ。
ほら、答えて」

「えー優しい人？」

優しい、人。

たった今ぽつりと浮き出た言葉をゆっくり咀嚼する。

「ふうん」

「おいインタビュアー(笑)」

思ってたより興味無さそうな声が出てしまった。

そんな俺がお気に召さなかったのか突っ込んでくるけど、楽しそうににこにこしてんじゃん。ね。

「他には？」

「嘘つかない人」

「他」

「何(笑)

もー、私のことずっと好きでいてくれる人！
これでいいですか、もうない！(笑)」

しつこかったのか、ちょっとだけ声を荒らげて返事をするA。

「…へえ」

これに対しても、また口からぼや、と出ただけの言葉が舞う。

ごめんな、興味無いわけじゃないんだけど。

「いやへえって(笑)

柳田さんインタビュアー向いてないよ、辞めちまいましょう」

「うん、辞めよっかな。バレー選手になる」

「やったー」

じゃあ早く片付け行ってきて、なんて俺の背中を強く押してこの場から離れさせる彼女。

それに抗うこともせずに仲間の元へ向かう俺の頭の中は、さっきのAの言葉がぐるぐると渦巻いていた。

優しくて、嘘つかなくて、お前をずっと好きでいてられる男なんて、さ。
それってさ。

「…俺しかいないじゃんね」

どう？駄目？

なんて、聞こえてないだろうけど。

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