憎いんです、憧れと恋が #12 ページ16
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「A選手、握手してください」
差し出した俺の手を、酷く困惑したように眺めるのは、
かつて、日の丸を背負っていた、俺の憧れの人。
彼女は数年前、当たり障りのない言葉を並べて表舞台から引退、
今は選手の役に立ちたいと裏から俺たちを支えてくれる職に就いた。
「……藍くん…」
それでも、俺は。
「分かってます
…分かって、るんです。これでも」
当たり障りのない言葉を選んだのは大きな事態にしたくなかったから。
まだ若い芽を摘もうとする大人の声に耐えられなくなったから。
日の丸という巨大な存在に飲み込まれそうになったから。
そして、彼女の足が、壊れかけていたことも。
全部、知ってるんだ。
「それでも僕にとってAさんは、
A選手は、僕の憧れなんです。
A選手がすきなんです」
子供だろうか。彼女の事情を差し置いて、貴女の青春が好きだったなんて言うのは。
それに、俺が言った、すき、なんて言葉は、
憧れと並べて出すようなほど綺麗な感情ではないけど。
Aさんと並んでつくづく思うのは、
俺は多分、この人の前だといつまで経っても大人になれないということ。
「………ガキって、言わんといてくださいね」
「…言わないよ」
ありがとう、なんて
俺の手を優しく握ってくれたAさんの手にはもう、
硬くて痛々しいマメなんて跡形もなかった。
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gkm(プロフ) - 小川選手も見たいです><♡ (10月13日 1時) (レス) id: ea76fb8e35 (このIDを非表示/違反報告)
ネオンライト - 2、6、8あたりも増やしてほしいです🥺 (10月11日 11時) (レス) id: 1121998891 (このIDを非表示/違反報告)
那由多(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです!更新楽しみにしてます! (10月3日 20時) (レス) id: be4804b7f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めん | 作成日時:2023年8月6日 0時