1.目が覚めたら ページ1
目が覚めると、知らない場所にいた。広暗い場所に、分娩台のようなものに寝そべっていた。一体なぜ。事態を理解しようと、まだ曇りがかった脳内を必死に動かそうとした。
が、
わからなかった。
私が誰なのか、
ここがどこなのか、
何一つ。わからなかったのだ。
思い出せない…せめて場所だけでも把握しよう。そう思い体を動かした。
上半身を起こすと、分娩台(仮)の金属の反射で顔が見えた。まだ眠そうな瞼に、口をあんぐり開けている女性。どうやら自分のようだ。平均よりはいくらか美しい顔をしている。少々びっくり。
自分はモデルでもやっていたのか、なぜこんな所に、と考えていると扉が開いた。
驚いて振り返ると、
「覚えているかい?」
と。私自身の記憶を指しているのか、はたまた白髪の男の自身を指しているのか。戸惑いを隠せなかったようだ。男は察して
「君自身のことだよ。自分の名前は?」
と聞いてきた。
『…わかりません。何も。覚えてないんです。今度は私の番です。一、私は誰か。二、ここはどこか。三、貴方は誰か、答えてください。』
私がそう凄むと男はにこりと笑い、問いに答えた。
「一、君はXY-0610RN。アンドロイドだよ。」
『は?』
アンドロイド…?
「まさか、アンドロイドについても?」
忘れている……。というか分からない。人間ではないのか?
『申し訳ありません。二、の質問の前にアンドロイドとはどういうものなのか説明していただきたい。』
私はなるべく感情を抑えて聞いた。実際に抑えられているかどうかは分からないが。
「アンドロイドとは、人間の姿を精巧に模して造られたロボットのことだ。太陽肥大化現象により人間の活動が制限された中で、労働力となるべく作られた存在。要するにロボットだよ。」
『ロボット…』
「しかし、人間と同じ様に心、感情が存在する。現に私もアンドロイドだ。」
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作者名:ソプラノのマスク | 作成日時:2023年7月23日 16時