変更と恐怖 ページ5
青い布を患者全体に被せる
頭の部分を麻酔科医が受け取り
患者の頭部にテントのような空間を作る
そして患者の
ライフラインを確認する
患者に布が被されると同時に
術野という世界が広がる
それは人間を
ただの肉の塊に変えるための儀式
単なる物体と化した
肉塊を前に
全身を青い服に包んだ二人の男が佇む
ゴム製の手袋で覆われた両手を
胸の前で組み合わせ
敬虔な祈りを捧げるように俯く
彼らは
手術室に神が降臨するのを待っていた
扉が開いた
佐伯教授は大股で
一気に玉座に着いた
その後ろに
羽柴先生がいらっしゃった
羽柴先生は
教授の後ろに居た
一同、礼をする
佐伯
今日の第一助手は
羽柴くんにやって貰う
垣谷
！！！！！！
佐伯
羽柴くん、いいかね？
『わたしは構いませんよ、教授』
何故突然
第一助手を代わるのか
垣谷先生もまったく意味がわからない
というそんな顔をしていた
変更を告げられた垣谷先生は後ろに下がり
羽柴先生が俺の隣に立った
佐伯
メス
考える暇もなく
佐伯教授の命じる声
世良が術野を見ると
すでに腹壁は正中線でぱっくり口をあけ
薄桃色の臓器が剥き出しにされていた
コッヘル
コッヘル
クーパー
ペアン
ミクリッツ
佐伯教授と羽柴先生の声が交差し
器械出しの看護婦の指が応じる
世良は呆然とその様を見つめる
何が起こってるのか理解出来ないまま
羽柴先生の声を耳にする
『開窓器』
次の瞬間
開かれた腹部は
銀縁の四角い窓にふちどられた
佐伯
一年坊、鉤を引け
世良がきょとんと佐伯教授を見る
と、同時に足に激しい痛みが走った
『教授の手を煩わせないで
鉤を引きなさいと言われてるの』
うつむいて確認すると
それは羽柴先生の靴のヒール部分だった
羽柴先生が自分の足を踏みつけていた
羽柴先生が
金属製のヘラを受け取り
肝臓下面に押し当てる
その手元を世良に手渡して囁く
『絶対に動かしちゃ駄目よ』
羽柴先生の言葉に
佐伯教授の声が覆い被さる
佐伯
他人の腹を覗いている間は
地獄の縁の散歩中だ
『グズは針山に
叩き落とされるわよ(笑)』
マスク越しでわからないが
羽柴先生は笑っていた
世良は
二人の怒号に震え上がり
身を硬くした
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帝(プロフ) - ちゃっちゃんさんへ──ありがとうございます。ドラマだけ見てる方もいらっしゃると思うので敢えて小説のまま書いてある部分があります。これからも精進致します。 (2018年5月7日 11時) (
レス) id: 8b6dd09fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっちゃん - 佐伯教授にも信頼されている様子が分かり、とても良い設定だと思います！これからの展開を楽しみにしています！ (2018年5月7日 10時) (レス) id: fc5666b067 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：帝
| 作成日時：2018年5月4日 10時
