狂人短編記録 2冊目

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阿蒜side



「さぁ、獅子王組腕相撲大会！気になる対戦カードは期待の新人阿蒜寛太と最強の女極道○○A！実況は俺、井上月麦と…」

「解説役の伊武隼人だ。これは面白い勝負になりそうだねぇ。」

「ではでは…スタート！」


井上の兄貴の合図で両者手に力を込め…なかった。

正確に言うと俺は込めなかった。何故なら手のひら越しの感触が柔らかすぎたから。

チラッとAの姉貴の方を見ると頑張って力を込めようとしているのが見える。


『〈むー、かんちゃん手おっきい〉』

「〈ま、まぁ俺男ですから…〉」

『…』

「Aの姉貴…？」

「おーっと！？両者1歩も動きません！中々競っているみたいですが伊武の兄貴、どう思いますか？」

「冷静なまま様子見は流石Aの姉貴といったところだねぇ、だが阿蒜もいい感じだ、流石兄貴たちが見込んだだけあるねぇ」


絶対違うぅぅぅ！？

…それよりこれどうする？こう言うのはちょっとあれだが簡単に勝てそうなんだよな。ちょっと力入れただけでもすぐに倒せる。


どうすればいいんだ！？そのまま勝つべきか、敢えて負けるか…



『〈…かんちゃん〉』

「〈は、はい…〉」


どうするか葛藤していたらAの姉貴が急に真剣な感じで声をかけてきた。

恐る恐る顔色を伺うと…何と泣きそうな目で見つめてきたのだ！



『かんちゃん…勝ち譲って欲しいなぁ…？』

「えっ…！？〈あ、姉貴…！？〉」


戸惑っているとぎゅっと手を握ってきた。よくよく考えたら触り心地…て何考えてるんだ俺は！？

てか改めて見るとすげぇ美人…あ、これは負けていいかも…


『…ありがとぉ。』


パワーを0%にしていたらそのまま手を倒される。腕相撲のルール上当然決着がついた。



「おぉー！これは…勝者、Aの姉貴！」

「いい勝負だったねぇ、お疲れさんだ。」

「…どういう状況すかこれ。」



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