その太陽に手が届きそう【煉獄 杏寿郎⠀】

77話 ページ29

私の着替えが済んだあと、燈寿郎は千寿郎くんの所へ行ってしまったから、そろそろお風呂に入っているかな〜なんて燈寿郎のタオルを持っていった。

なんとも溌剌な声が扉の外まで漏れているもので、

あれです。

盗み聞きじゃありませんよ！



煉獄「俺もまだまだだな！まずは目先の問題を･･･Aさんもそう思っているだろうからな。よし！大丈夫だ！！！」



ガチャっと扉が開く音がして慌てて隠れようにも、すぐ隠れる場所は見当たらなく、思わずタオルで顔を隠した。

待って待ってっ！

今、名前で呼んでいなかった？

私の事よね？私よね？

普段"藤枝さん"って呼ぶのに！

いいえ、嬉しいのですけど！

嬉しすぎるのですけど、もしかしてこれは私もちゃんと名前を呼ぶべきなのでは！？



『あ、あの･･･わっ、わぁ！！！？？』



そぉっと顔をあげると、煉獄さんが顔を真っ赤にして目を回しているし、ドアノブを掴んで扉を開いた状態で動かなくなっている。

これは、危ない。

今は名前を呼ぶのを諦めましょう。



『煉獄さん！？大丈夫ですか！しっかりしてください！！！』



煉獄さんの右手をそっと掴んで、小さく揺らした。



煉獄「あ、すまない！独り言だったのだが･･･聞かれていたと思うと恥ずかしいなっ！！穴があったら入りたい！！！！」

『穴？いえ、あまりよく･･･あの、聞こえませんでしたから･･･』

煉獄「藤枝･･･いや、Aさん！嘘はいけない。聞こえたのなら是非聞いてもらいたいお願いがある！！」

『は、はい！！』



私が掴んでいたはずの右手は、今や煉獄さんの両手で包まれていて、ニッコリと笑った顔がズイっと私の顔面に迫るもので、思わず声が大きくなってしまう。





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