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少しの沈黙が続いたあと、ふっと誰かが息を漏らした。それは笑ったようにも呆れたようにも聞こえて、どちらにせよ怖くて仕方がなかった。
「ばかだなぁ。相変わらず。」
『うらた…。』
その張本人のうらたはあっけらかんとしていて、柔らかい笑い方をしながらも真剣な翡翠の目をして私を見ていた。
「俺らがいつ居なくなるっつったよ。俺らが金で釣られて出てくような
『それはちがう!そうじゃなくて…』
「はいはい、うらたんもそう煽る言い方しぃへんの。まぁ言いたくなる気持ちもわかりますけど。」
『え、分かるの?』
話に入ってきたセンラがしれっとひどいことを言うもんだから、ついつい突っかかってしまった。
「さっきも言いましたよ。俺らは離れへんって。」
『うぅ…。』
二度も念押しされて、ぐうの音も出ない。反論せず唸っていた。
.
「あっ、ええこと思いついた。」
.
いままで黙っていた志麻が不意に声を上げた。その顔はイタズラを思いついた少年のような笑顔だっな。私は不思議に思って続きを話すように促す。
「毎日街に降りよう。」
『え!!』
「いや、志麻くん。Aに甘いのは今に始まったことじゃないけど…今までの流れ分かってる?てか1番反対してたよね??」
志麻の魅力的な発案に私の目が輝く。そんな私を一瞥したうらたは呆れたため息をついて志麻くんを責める言葉を並べる。しかし、いつも通り反発する志麻くんはいなくて甘いと言いたげにもう一度笑って人差し指を立てる。
「俺が嫌なんは俺がおらんときにAが危険な目に遭うことやねん。だから、毎日俺らが交代でAと街に降りたらええねん。」
きっと街に降りること自体を否定してきた3人は声を揃えた。
『しま、天才。』
「やろ?」
他がまあそれならと口々に頷いていく中坂田だけはなんだか納得いかないように唸っていた。が、志麻がこそこそと坂田の耳元でなにか話したかと思えば、「よしそうしよう。今すぐしよう」と声を上げた。
志麻は何を言ったんだろう。
「はい、それじゃこれからはそういう流れで行きましょう。詳しいことは俺らで決めます。Aもそれでええ?」
私がこくんと頷くと、よしと言いたげに頭を撫でたセンラは、私のストールをもう一度しっかり肩にかける。
そして、連れられて寝室に戻ると、さっき目覚めてしまったことが嘘のように朝までぐっすりと眠ってしまった。
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さくらいろ(プロフ) - over the rainさん» 応援ありがとうございました!長い間何も更新しておらずすみません…これからはちゃんと更新を続けていくつもりですのでまた見ていただけると幸いです! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - くらっかーさん» 応援ありがとうございました!ようやく受験が終わったのでこちらの活動の方も再開させていただきます! (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
さくらいろ(プロフ) - 舞花さん» 舞香さん、アカウント変えて気づかないかもしれませんが、リクエストの方了解致しました!私も後々やまだぬきちゃんは出演させる予定だったので参考にさせてもらいますね!ありがとうございます(*´˘`*) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 8627590864 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 - 受験お互い頑張りましょう!また会いに来ます! (2020年1月1日 23時) (レス) id: 957c180cee (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 受験勉強大変ですよね!首を長くしてお待ちしてます! (2020年1月1日 9時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらいろ | 作成日時:2019年11月4日 0時