階級・甲の癸さん拾陸

729話　鬼舞辻side ページ35

鬼舞辻「春姫。」



声を掛ければ、嬉しそうに私に駆け寄ってくる春姫。



春姫「どうしたんですか？無惨さん。」



鬼舞辻「…可愛いな。」



可愛らしく微笑む春姫を見ていると、つい言葉に出てしまっていたらしく…春姫が顔を赤くしている。



相変わらず初心な反応をする奴だ。



そう思いながら春姫の頭を撫で、問い掛ける。



鬼舞辻「妻にならないか？」



春姫「……………え？」



素っ頓狂な声を上げ、驚いた顔を向けてくる。



鬼舞辻「…既にそうだったようなものだがな、正式に嫁として迎えたい。」



そう聞くと、突然抱き着いてくる。



春姫「…凄く嬉しいです。」



鬼舞辻「肯定と受け取っていいか？」



春姫「…私で良ければ、是非よろしくお願いします。」



微笑む春姫は本当に可愛らしくて、見ていて幸せな気持ちになれる。



…そうか、これが幸せというものなのか。



春姫と出会って私は、失っていた人としての感情を取り戻してきたような気がする。



春姫と出会えたのは奇跡的なことで…その奇跡が、私に様々なことをもたらしてくれた。



鬼舞辻「…春姫には、感謝してもしきれないな。」



春姫「それは私もですから…。」



きっとお互いが、お互いを必要とし合っている。



出会わなければ私達は…お互い、幸せになどなれなかった。



鬼にならなければ。



人として生まれなければ。



…鬼と人間の共存…有り得ない話でもないのかもしれない。



春姫といると…そう思うことが、出来た。

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