階級・甲の癸さん拾陸

717話　鬼舞辻side ページ23

春姫「…颯太くん、もう会えないんだ。」



…正直に言えば、人の愚かさを改めて知らされたように感じた。



颯太の一族は…つまり春姫の一族は、神職の者から言われた職に就き、言われた相手と結婚しなければならない。



それを断った場合…罰を受ける、と言った形で神への生贄として差し出され…殺されてしまう。



颯太は今回その話を受け、言われた職に就くため…言われた相手と結婚するため、隣の家を出た。



…颯太は最後の最後まで、自分が実の兄だということを…春姫に伝えなかった。



鬼舞辻「…人間とはそういうものだ、居るかも分からない神を信じ…時のそのため鬼となる。」



『…鬼、』



鬼舞辻「本物の鬼よりずっと質が悪いな。」



…別に、颯太には感情移入などはしていない。



だが…春姫を大切に思う気持ちは同じだった…だからこそ、親近感のようなものが湧いていたのかもしれない。



…人間は、鬼を、化物を、邪険に扱っては否定する…その割に…ずっと質が悪く、同じ人間を苦しめる。



『…私は、人間も…鬼も、好き。』



鬼舞辻「…春姫、」



『颯太くんは人間だから…私は人間が好き。

…無惨さんが鬼だから…私は鬼が好き………私は、二人が、大好き。』



…きっと、自分の不甲斐なさに苦しんでいる。



だが、こればかりは何も出来ないだろう。



鬼舞辻「…春姫、中に入るぞ。」



春姫「…はい。」



…人間とは、醜い生き物だ。

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