階級・甲の癸さん拾陸

713話　鬼舞辻side ページ19

春姫「聞いてください無惨さん！」



十つにしては流暢に話す春姫は、いつも私を呼びながら駆け寄ってくる。



…本人には言っては居ないが、私からしたら春姫は可愛くて仕方のない奴。



どうにか守ってやりたくなる。



鬼舞辻「何だ。」



だが、口数の多い春姫に比べてしまえば私は多い方ではない。



…だからこそ、余りそれは伝わっていないかもしれない。



春姫「颯太くんと約束しました〜！」



…颯太(りゅうた)。



確かよく庭に遊びに来る隣に住んでいる少年だった気がする。



年齢は春姫の四つ上だったか…。



鬼舞辻「約束？」



春姫「大きくなったら夫婦になるって！」



…飲もうとしていた茶を溢してしまったのは仕方がないと思っている。



春姫「無惨さん！？」



それに驚いたのか、駆け寄ってくる春姫を腕の中に閉じ込める。



春姫「…どうしたんですか…？」



鬼舞辻「…馬鹿か貴様は、そういうのは大人になって大切な相手が出来てから決めることだ。」



春姫「私颯太くんのこと好きですよ…？」



鬼舞辻「…ならば私と颯太とやら、どっちの方が好きなんだ。」



そう聞くと、私を見上げながら笑う。



春姫「無惨さん！」



鬼舞辻「それなら私の言うことを聞いておけ。」



春姫「はーい！」



…子どもの口約束に、何をムキになっているのか。



自分の馬鹿さを感じながら、腕の中で嬉しそうにしている春姫を見る。



…こいつだけは、手放したくないのだ。

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