流れで鬼殺隊に入った少女の物語

二頁 ページ4

『眠…』



甘味処でわらび餅を食べながらそう呟く。



僕って実は育手さんに引き取られるまでの記憶が朧気にしかないんですね。



いや覚えている所は覚えてるんですよ、例えば家族(？)構成が母と10歳くらい年上の姉だったとか、目の前で殺された所とか…いやでも鬼に殺されたんだって言われてもぴんと来なかったんだよな、かなりエグい殺され方してた気はするけど、どんな人にどうやって殺されたかとかは覚えてないから。



育手さん曰く「家族が目の前で殺された衝撃で、その前までの記憶が朧気にしかなくなってしまったんだろう」らしいんだけど、特に家族に対して何か感情とか持ってなかったと思うんだよなぁ…何せ僕はトリップして来ていますから。



僕にとっての家族ってのは元の世界の家族なわけですから…まあその家族にも何か感情とかは持ってなかったんだけど…それは今は置いておこう。



8歳くらいで育手さんに引き取られ、それから1年くらいは文字だの何だのを教えてくれたんだけど(まあ知ってはいたけど、時代が違うみたいだから文字の作りが少し違った)、9歳くらいからはずっと3年くらいに渡って鍛錬だの呼吸とやらが使えるようになるように特訓だの…望んでないことが起こりすぎて本当に勘弁して欲しかったんだよなぁ。



鍛錬疲れるし、呼吸使うの大変だし、面倒くさいし毎日身体痛くなるし…そもそも鬼に対しての嫌な感情とか持ってなかったってのにどうして鬼を殺すための鍛錬させられてたかは今でも分からない。



最終選別とやらに行かされることになった時は、「この人僕のこと殺したいのかもしれない」って心の底から思ったしね、まあ育手さん曰く僕に期待してたかららしいんだけど…ごめんね、強くなるも何もなかったよ…何故か甲隊士にはなれたけど。



そういや最後に会ったの甲隊士になってすぐだったな…甲隊士になったって言ったらめちゃくちゃ褒めてくれた気がする…いやほんとたまたま生き残っちゃっただけなんだよ…過度な期待をさせてしまってごめんよ…なんて今になっては本人にも言えないんだけど。

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