雨柱の癸さん弐

76話　胡蝶side ページ37

胡蝶「……お久しぶりです。」



遥大「…久しぶり。」



…この人は、蝶野遥大さん。



…姉さんの、生前の婚約者。



姉さんが亡くなる前はよく蝶屋敷にも来ていて…お話も沢山したりした。



まだ結婚はしていなかったけれど、私からすれば兄も同然。



そんな人だった。



…でも、姉さんが死んで…それからは、ぱったりと会わなくなってしまった。



甘味処を祖母と営んでいると言う話は聞いていましたが…此処だったんですね。



そう思いながらも、少し気まずさを感じていると…遥大さんは、私の頭を撫でた。



胡蝶「…遥大さん？」



遥大「…大きくなったなぁ。」



優しく、妹を見るようなあたたかい眼差しを私に向けて、そう言ってくれる。



…ああ、貴方は本当に…私の兄のよう…。



胡蝶「私…は…」



遥大「ごめんね、行かなくなって…しのぶちゃんも悲しかっただろう…心細かっただろう…。」



…貴方だって、悲しくて心細いはずなのに、



遥大「もししのぶちゃんが嫌じゃなかったら…また行ってもいいかな、蝶屋敷。」



…何言ってるんですか、



胡蝶「嫌なはず、ないじゃ…ないですか…。」



いやじゃない、嫌なわけがない。



遥大「そっか、ありがとう。」



胡蝶「私の方こそありがとうございます…。」



…その会話を聞いていたのか、Aさんが微笑んでいるのが見える。



…遥大さんのことを知っていたから、今日来るように言ったんですね。



あなたには本当に…感謝してもしきれませんよ。

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