雨柱の癸さん弐

73話 ページ34

遥大「今から…何年くらい前だっけな…俺には婚約者が居たんだ。」



あの甘味処につき、お饅頭とお茶を出してくれた遥大さんは話し始める。



遥大「いつも笑顔の可愛い…それでいて凄え綺麗な奴でさ。

鬼殺隊の中でも強い奴らの一人だった…本当に凄い奴だなって思ってたよ。」



綺麗な月に目を向け、そう言う遥大さんはやっぱり悲しげだ。



遥大「また、いつもみたいに笑い掛けてくれる…そう思っていたのに、任務だったのか何なのか…鬼によって殺されちまったらしくて。

鬼殺隊がそういうもんだって知ってはいたけどな…やっぱり辛かったんだよ。」



『…鬼殺隊は、人を守るために戦います…だからこそ、時々それに酔って命を落としてしまう人とかも居る…。』



遥大「お前みたいに若くて、まだこれからがあるような奴が死ぬのはもったいないよ。

ばあちゃんとかが言うように…折角綺麗な顔を持っててさ…これからが幸せになれる時なのに…もしそれで死んだらどうする？

…お前が死んだら悲しむ奴が大勢居るだろ、それも考えろよ。」



大切な人に置いて行かれ、遺された人がどんな気持ちになるか…それはよく知っている。



遥大「周りを守るのは素敵なことだと思う…でもそれでお前が死んだら元も子もないんだよ。

生きないといけないのに…そんなことしてたら、もったいないだろ？

…もっと命を大切にしろよ…お前は、お前らはまだ若い…これからがあるんだから。」



そう言って、遥大さんは僕の頭を優しく撫でた。

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