雨柱の癸さん弐

56話 ページ17

『ねぇねぇねぇねぇ何か話そー？』



「…お前攫われてる自覚あるのか。」



『…ん、や、だって助けに来てくれるしさ…来てくれたらあなた達の命は保証出来ないんで、それまで話そう？みたいな気持ちです。』



「相当信じてんだなお前…。」



呆れたように溜息を吐く。



「人は簡単に人を裏切るし、守りたい存在こそ守れねぇもんなんだよ。」



そう言いながら遠くを見る彼に、何処か悲しい何かを感じる。



『…貴方、名前は？』



「何でそんなこと教えねぇとなんねぇんだよ。」



『まあまあ良いから良いから。僕は癸A。』



雄基「…黎瀬雄基(くろせゆうき)、それが何だ。」



『何があったかは知らんけど、こういうことするのはお門違いだとは思いませんでした？』



静かに問い掛ければ、遠くを見ながら答える。



雄基「お前に説教される意味が分かんねぇよ、黙って人質やってろ。」



『さっきの言葉、とてもよく分かった。』



人ってそうだもんね、簡単に裏切る。



それに、守りたい存在こそ守れない。



痛いほど分かる。



『まあでもだからって…何しても良いわけでは決してないのだけれど。』



雄基「…知ってんだよ、そのくらい。」



…ああ、本当に何があったのかなぁ…。



僕が幸せに暮らしている内に、不幸で居る人は必ず居る。



「お、おい！！」



そう言いながら突然入ってくる男の人。



雄基「どうした。」



「やっ…やべえっ…化物達がやって来たっ…！！」



…来た来た。

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