階級・甲の癸さん拾壱

489話　嘴平side ページ31

嘴平「早く起きろよ。」



こつん、と軽く頭を殴っても起きない。



死にそうになってから一度も目を覚まさない馬鹿女。



まだちゃんと勝負したこともないのに死ぬとか、そんなの許さねえ。



お前のその嘘の笑顔引っ剥がしていずれ本物の笑顔にさせてやるって決めてた。



だからこそ、まず引っ剥がすためにも勝負に勝ってやるって。



なのにこいつは俺を見る度、勝負を挑む度逃げて叫んで…。



弱虫で、臆病で、怖がりで、その癖めちゃくちゃ強え。



…それで、お前が心底楽しそうに笑った時、何かほわほわするし。



笑えないときの笑顔が腹立つけど、楽しそうに笑ってるとほわほわすんだよ。



ほわほわさせんな！っていつも言ってたし思ってたけど。



それがないと気が狂うしいらいらする。



だから、早く目を覚ましていつもみたいにうるさいくらいの馬鹿でかい声で、叫べよ。



初めて会った時から、俺はお前に一度も勝ててねえんだよ。



俺が勝つまで他の奴に負けるなって言ったろ。



どんぐりやるから、お前の欲しいもの買ってきてやるから、だから早く起きろ。



お前の声聞かないと、顔見ないと、何だか調子が乗んねえんだよ。



軽く彼奴の頬に触れる。



…何でそんなに冷たいんだよ、お前こんなに体温低かったか？



前俺の口を塞いだ時の手は、あんなにあたたかかったくせに。



…巫山戯んな馬鹿野郎、とっとと起きやがれ。



嘴平「早く起きろよ…A…！！」

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