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あれは確か蒸し暑くて
ただ外に立っているだけで汗が出るような
蝉の声がうるさい夏の日のこと。
近頃咳が止まらないことに悩んでいた私は
ただの風邪だろうと思いながら
病院へ行った。
でも、その日はレントゲンを撮られたりMRIを撮られたり
何かおかしいって感じたのはお医者さんに呼ばれ
診察室に、私の肺のMRI写真が貼られているのを見たとき。
“肺癌”の文字を聞いた瞬間は言葉が出なかった。
もう末期に近いとまで言われた。
若いから進行も早い、と。
ああ、人間って死ぬんだってこの時改めて実感した。
死にたくないとか、やり残したこととか
腐る程ある中で、何をするのが一番良いかを考えた。
そんな時、昔からのライバルのシルクロードの存在を思い出した。
あの人なら、
あの人となら悔いなく一年過ごせるって直感で思った。
私に特別な感情を抱かない
私に興味のない人と一年を過ごしたかった。
私が死んでも、死んだんだなくらいにしか思わない人と。
それにはシルクロードは最適で
気付けば私は病気を宣告されてから3ヶ月経った今、彼と会ってお酒を飲んでいた。
彼の前で泣いてしまったのは大誤算だったけれど
これから悪友として一年間付き合ってもらう中で
悔いなく生きる計画を立てた。
「諒、とりあえず明日沖縄に行こう」
「は?明日?」
「撮影って程でも良いようにチケットは5枚あるんだ」
彼の前に明日出発の飛行機のチケットを差し出した。
彼ならきっと付き合ってくれると確信して1ヶ月前に買ったチケットだった。
「お前急すぎるんだけど」
「来るか来ないかは諒次第ってことにしておくよ。
とりあえず明日、羽田空港で待ってるから」
私は飲み代を机に残し
居酒屋を後にした。
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鈴木佳花 - 最後めっちゃ泣いちゃった (2019年2月1日 19時) (レス) id: 8c51f3c097 (このIDを非表示/違反報告)
リサル - 君を忘れたいを聴きながら、読んでいたので、なんだか、曲とあっていて、倍泣いてしまいました。とってもいい作品です! (2018年11月25日 17時) (レス) id: 0d0f76e2d7 (このIDを非表示/違反報告)
るる - なんか、「君の膵臓を食べたい」に似てる気がする。 (2018年8月5日 15時) (レス) id: 5f41b25908 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあゆあ - めっちゃ泣いてしまいました~!いい作品! (2018年6月22日 19時) (レス) id: d4e608e91e (このIDを非表示/違反報告)
ういろううり(プロフ) - 話がすごく良すぎて泣いてしまいました。すごくいい話! (2018年5月31日 23時) (レス) id: 5156ec9647 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すば∞なな | 作成日時:2017年6月25日 22時