ラムネ【Fischer's】~Episode2~

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もうこんな時間だ。






物思いにふけていた時間は思うよりも長かったみたいで






夜ごはんの材料を買うため家を後にした。







東京にいた頃はあまり見なかった夕焼け空も







北海道に来て見るようになった。







ビルひとつない街がオレンジに染まっていく。







影法師が伸びていく。







賑やかな子どもたちの声







カラスの鳴き声







綺麗な景色と







日常的な幸せな音を聞き幸せな気分になった。







こんなに清々しい気分になるのは久しぶりだから







近くの公園に寄り道した。







その公園の桜はもうすぐで全て散ってしまいそうだった。







そんな桜の木を眺めていると







まだ咲いていない蕾がひとつ。







なんだかそれに惹かれた私は







スマホを手にして







パシャりと写真を撮った。








「何撮ってんだよ」








聞き覚えのある声。








懐かしい声。








振り返ることができなかった。








「…諒？」








「あたりー」








なんで？









どうして？









「ほら、こっち向けよ」








振り向けるわけがなかった。








ひとつ、またひとつ








数えきれない涙が零れていく。








「迎えにきた」








そう私を後ろから抱きしめる君の温もりは








温かすぎて








泣くことしか出来なかった。

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