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月日は更に流れ、高校の卒業式。


3年間で絹張くんと話したのは結局試合の次の日が最後で、その後は全く喋らなかった。


いや、正しくは私が避けていたんだ。


それで良かったのだと納得し、卒業生で賑やかな校舎をあとにしようと靴を履いていた。


すると絹張くんが駆け寄ってきて


「話あるからちょっと学校の前で残っててくんね?
出来るだけ早く行くから」


とだけ私に告げ、号泣する後輩の元へ去って行った。


せっかく自分なりに片をつけたのに。
やっぱり彼は変なタイミングで私の前に現れる。


正直待とうか迷ったけれど、特に用事もなかった私は、1時間程音楽を聴きながら桜並木の下で待っていた。


まだ咲く気配の無い木々を眺めて思い出を振り返っていた。


「おーい!」


元気な声が聞こえ振り返る。


「絹張くん」


「よっ、A
待たせたな」


合流した私達は自然と足を進めた。


「3年間ずっと思ってたこと聞いてもいい?
絹張くんって、なんでずっと親しげにしてくるの?」


最後くらい、ずっと思っていた事を聞いても罪にはならないだろう、と疑問をぶつけた。


「嫌だった?」


彼から返ってきたのは答えではなく疑問だった。


「んーん」


彼の疑問に否定すると、彼からまた疑問が返ってきた。


「じゃあ俺もひとつ聞いていい?」


彼は足を止め、私も続いて足を止めた。


「なんで幼馴染で中学まではシルクって呼んでたのに今は絹張くん?」


「それは、だって」


痛い質問だった。


「俺が中学ん時お前のこと振って他の女と付き合ったから?」


「…図星すぎてなんとも言えない」


こうなったら、とやけになって答えると、
さっきまで真剣だった彼の表情は一気に緩んだ。


「なんだよそれ、嫉妬かよ」


「シルクはずるい。
振っておいて仲良くしてくるなんてずるい。
忘れようとしたって忘れられなくなっちゃうじゃん。いつもそう。私が桜の写真撮ってた時も他人のふりして話しかけて、試合の写真頼むくせに他の女の子にべた惚れなのバレバレだし…好きじゃないならもう話しかけないでよ。好きなのやめられなくなるじゃん!」


気付けば涙と共に隠していた思いが溢れていた。


「待たせてごめん、俺、やっぱりお前が好きだわ」


号泣する私を抱きしめてそんなことを言うから、気の抜けた返事しかできなかった。


「俺と付き合ってくださいってことだよ」


その言葉が嬉しくて、ちょっと複雑で


「遅いよばか」


と軽く殴った。

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設定タグ:Fischer's , シルクロード , フィッシャーズ   
作品ジャンル:恋愛
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花梨 - 楽しみにしてます!! (2018年11月6日 18時) (レス) id: e6157cc2f4 (このIDを非表示/違反報告)
橘雫(プロフ) - 花梨さん» ありがとうございます!色々と修正してもっとキュンキュンして頂けるような小説にしていきますので、お楽しみに! (2018年10月6日 22時) (レス) id: 1c9cad39f6 (このIDを非表示/違反報告)
花梨 - 最高すぎです!文才が神すぎです。終始きゅんきゅんでした。こういう感じのガンガン書いてください!めっちゃよみます!フィッシャーズ最高!!! (2018年10月2日 21時) (レス) id: e4eb9fe5a5 (このIDを非表示/違反報告)
橘雫(プロフ) - 書き直しを始めました。急ピッチで進めているため、誤字等あるかもしれません。その場合はご指定いただけると嬉しいです。 (2018年9月25日 15時) (レス) id: 1c9cad39f6 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - すごいですね!最初からこういうのにしようって考えてたんですね!?素晴らしい!! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 2870e13e2c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:橘雫 | 作成日時:2017年4月17日 19時

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