6 ページ6
・
「なあA、ここにあった駄菓子屋覚えてっか？」
二人きりの帰り道シルクはそう呟いた。
「覚えてるよ」
「じゃあ中3の時の夏祭りは？」
「それも覚えてるよ」
「そん時お前とラムネ買って飲んだよな」
「そうだね」
それは私にとって少しだけ苦い思い出。
「なあ、ちょっと今飲まね？」
「いいけど。コンビニにあるかな？」
「あるよ。買ってくるから待ってろ」
そう言って足早にコンビニに入って袋を下げて帰ってくる彼。
私も彼も、きっと考えている事は同じなのだろう。
「はい、これお前のぶん」
「ありがとう」
「あそこの河川敷で飲もうぜ」
「いいけどあそこ虫多くて嫌い」
なんとなくそんなことを考えていたから、文句を言いつつも河川敷に向かって中学の頃のように河川敷に座りラムネを開けた。
「うめーな、やっぱり」
「おいしいね」
空は赤く染まり、カラスが群れをなして飛んでいる。
「そういやさ、この玉なんて言うか知ってっか？」
それに見入る私に彼は懐かしい質問を投げかけた。
「A玉」
その問いの答えを私は知っている。
「そ、これお前から教えてもらったやつ」
無邪気に笑うその姿を見て、覚えていた事に対する喜びを感じた。
「あん時お前変なこと言ってたよな。
俺がA玉でお前がビー玉みたいなこと」
「覚えてたんだ」
そんな忠実に覚えていてくれるなんて思いもしなかった。
「覚えてっけど全く訳わかんねえままだわ」
「きっと大人になったらわかるよ」
自嘲じみた笑いを浮かべる彼にそう返すと
「お前子どもなのにわかんの？」
なんて生意気な事を返してくるから、こいつに気なんぞ遣うものでも無いと改めて思い知らされた。
「身長5センチしか変わらないのに上から目線腹立つ」
「うるせえ」
いつしか私達は空白の3年間を補うかのように笑いあっていた。
それもラムネのおかげかも知れないなと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 466人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花梨 - 楽しみにしてます！！ (2018年11月6日 18時) (
レス) id: e6157cc2f4 (このIDを非表示/違反報告)
橘雫(プロフ) - 花梨さん» ありがとうございます！色々と修正してもっとキュンキュンして頂けるような小説にしていきますので、お楽しみに！ (2018年10月6日 22時) (レス) id: 1c9cad39f6 (このIDを非表示/違反報告)
花梨 - 最高すぎです！文才が神すぎです。終始きゅんきゅんでした。こういう感じのガンガン書いてください！めっちゃよみます！フィッシャーズ最高！！！ (2018年10月2日 21時) (レス) id: e4eb9fe5a5 (このIDを非表示/違反報告)
橘雫(プロフ) - 書き直しを始めました。急ピッチで進めているため、誤字等あるかもしれません。その場合はご指定いただけると嬉しいです。 (2018年9月25日 15時) (レス) id: 1c9cad39f6 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - すごいですね！最初からこういうのにしようって考えてたんですね！？素晴らしい！！ (2018年1月1日 22時) (レス) id: 2870e13e2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：橘雫
| 作成日時：2017年4月17日 19時
