封印された一般人【呪術廻戦】

一般人と負荷 ページ45

反抗する力も残っていない私は、ぐったりと五条先生に支えられながら何とかその場に立ち続けていた。


「うちの可愛い生徒を引き抜こうだなんて、手が早いもんだね」
「五条の坊も小娘ひとりに随分と入れ込んでいるようだな？」
「教師として当然のことをしているまでさ。誘拐犯が居たら守るのが筋でしょ？」



誘拐犯……正直五条先生も人の事を言えないが、今は大人しくしておこう。この人の支えが無ければ立つことすら難しいのも事実、黙って二人の会話を聞き流す。

頭の上で言い合いをしている二人に加えて、耐えきれないほどの空腹感は、次第に苛立ちへと変化していく。ぎりぎりと不快な音を立てながら奥歯を噛み締めていると、五条先生に軽く小突かれる。力加減がわかっていないのか、割とちゃんと痛い。


「こら、今まで制御できてたんだから深呼吸して落ち着きな」
「フン、やはり正常な判断などとうにできなくなっているのだろう。驚異になる前にさっさと…」


そこまで言いかけたところで、ふと私と目が合う。まっすぐ私に向けられた指先が、僅かに震えているのがわかった。
何をそこまで怯えているのか…いや、歳か。ぐるぐると的を得ない思考の中、ピリついた空気を裂くようにして大きな音がなった。



ぐぅ〜っ…


「…A、ホント緊張感ない体してんね」
『欲に忠実なんです…』


大きなお腹の音に、思わず熱が集まる顔を抑え込む。こんな大人数相手に聞かれるなんて恥ずかしい以外の何物でもない。と言うか五条先生に関しては支えてもらっている体が、プルプルと小刻みに震えている。笑ってるのが丸わかりな上に、乙女に対して失礼な発言まで…

ちらりと指の隙間から老人を見てみる。間抜けな表情のまま固まっていたかと思えば、大きな溜息を一つこぼしたあと、じろりとしわくちゃの目元でこちらを睨んできた。


なんだ、そんなに気に食わなかったか。人の腹がなるのは仕方のない事だし、昼時の時間に態々邪魔しに来たそっちが悪いだろう。
私の空腹感も限界に近いのか、だらだらと冷や汗まで流れてきた。流石の様子に五条先生も危険だと察したようで、別れの挨拶もそこそこに寮の医務室まで飛ばされる


「硝子、取り敢えず糖注入しといて」
「ブドウ糖入れとくから食事の確保はある程度頼んだ」
「A〜、何食べたい」
『…からあげ』


軽い返事をしたあと、またどこかへ飛んでいく五条先生。ぼーっと椅子に腰掛けていると、点滴台が運ばれてくる。そんなに危険な状況だったのかと、どこか他人事のようにそれを見つめていた

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