一般人と死者蘇生 ページ40
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不本意ながら小屋の生活にも慣れてきた頃、久々の夜間任務で夜中に高専の敷地に戻ってきたのだが……
「へ、えっ……Aさん?」
同じく夜間任務であったであろう虎杖くんに見つかりました。この辺り街頭なくてほぼ暗闇と言ってもいいのによくわかったね、野生の勘ってやつかな。
なんて冗談を浮かべながらその場を立ち去ろうとすると、虎杖くんがこちらに駆け寄って来た。
勢い余って張り倒されるんじゃないかと危惧していたが、器用にも目の前で急ブレーキをかけて私の両肩を掴んでくる。
若干めり込んでて痛いが、後輩の可愛さで補える……いや結構痛いぞ力加減出来てないこの子。
ガッシリと肩を掴まれてじっと見つめられる。こんな状況じゃなかったら乙女らしくときめいていたことだろう。数秒見つめあっていると、その大きく見開かれた瞳が潤んできているのに気づく。何となく気まづくて何か言わなければと口を開いた。
『へへ、生きてました〜……ってね』
我ながら間抜けすぎる再会の言葉だ。
こんな感動の欠片も無い言葉を聞いて、呆れたのだろう。大きくため息をついたかと思えば、そのまま強く抱きしめられる。
虎杖くんって結構積極的なんだなぁ……いい匂いするけど柔軟剤何使ってるんだろう。
軋む骨の音に思わず苦言を零すと、慌てた様子で力を弛めてくれる。抱きつくのをやめはしないんだね?
「お、おれAさんが死んだって聞いて…でもあの時確かに生きてたけど、俺の勘違いなんじゃないかって…」
取り留めのない言葉を紡ぎながら、潤んだ瞳で私を見る虎杖くん。何となく彼に嘘をついていたことが心苦しく感じるが、主犯は五条先生だ。私自身は趣味の悪い嘘をつくほど白状ではないと思っている
なんて言い訳じみた事を考えていると、再度抱きしめられる。先程とは違った優しい抱擁になんだか小っ恥ずかしい気持ちになってしまい、どうくぐりぬけようか思案していると一言。
――生きてて良かった
『うん、』
「Aさんが生きててよかった…本当に、俺情けないけどさ。寂しいって思っちゃったんよね」
『そっか』
「まだ会ってそんなに話したわけじゃないのにさ、なんつーか…こう。恐怖とは違った感情があってさ」
『そうなんだね』
子供をあやす様に背中を摩ってあげると、何やら鼻をすする音が聞こえる。出会って間もなくてそんなに沢山関わってきた訳でもない人間に、ここまで優しい感情を向けてくれる虎杖くん。
どこまでも君は優しいんだね
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どどまる(プロフ) - るあさん» コメントありがとうございます。嬉しくて偽夏油様早めに絡ませました……。これからも楽しく読んでいただけたら幸いです。 (2023年3月21日 8時) (レス) id: c4fbd224fc (このIDを非表示/違反報告)
るあ - 面白すぎて、一気読みしてしまいました…偽夏油に毒舌で絡ませて欲しいです(( (2023年3月20日 0時) (レス) @page34 id: feef9f3ea4 (このIDを非表示/違反報告)
夜叉桜 - 五条悟との絡み増やして欲しいです…!応援してます! (2022年4月8日 1時) (レス) @page30 id: a7a0d282bf (このIDを非表示/違反報告)
どどまる(プロフ) - プスメラさん» コメントありがとうございます。オチにつきましては色んな方の希望があると思うので、今のところ決めていません…!完結が近づいてきましたらアンケートを取ろうと思ってます。応援ありがとうございます!!!! (2021年1月28日 0時) (レス) id: afd23be113 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラ - とどまるさん初めまして、この小説は五条悟オチがいいです。お願いします。続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年1月27日 14時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どどまる | 作成日時:2020年12月21日 13時