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「別に来てくれてもいいのだけど。でも、連絡の一つや二つを寄越すのは常識よね?」
「まあまあ、姉さん。確かに大事な話を邪魔されて苛立つのはわかるけど、せっかく来てくれたんだしさ」
姉をフォローしているようで、自分の本音をフォローしきれていない。
どうやら彼女もアポ無しでやって来た彼らに、苛つかずには居られないらしい。
「はぁ……Aの温情に感謝する事ね」
最終的に折れた姉は、疲れたように額に手をやる。その姉にニコッと微笑むと、コナンらへ目を向ける。
美しい鈍色の瞳は、どこか底知れぬモノを抱えているように見えて、ついつい見入ってしまう。
姉の機嫌を直した彼女は穏やかな顔つきのまま、旧知の仲である小五郎に声を掛ける。
「それで、どうしたんですか?依頼ですか?有料ですよ?毛利さんだけは特別価格で高くしますが?」
「なんで高くするんだよ!今日来たのは、この小僧が行きたいって言ったからだ!」
「わわっ」
隣に座っていたコナンの襟首を急に掴み上げ、生け贄のように二人の前へ差し出す。
ぶらんぶらんと揺れるコナンを見て、姉は機嫌を斜めに傾け、舌打ちをする。
あの時仲良くなれたと思ったのは気のせいだったのか、と呆れていると妹が言った。
「……ふむ。姉さん、今日の日程はどうなっていたかな?」
それに姉は机の引き出しを開けると、手帳を妹へぶん投げる。難なく受け取った姿を見る限り、これも普段通りのようだ。
――いや、姉は基本的に何もしないのかよ。
暫く何も喋らずに今日の日付の枠を確認する。長い間手帳とにらめっこをして、飽きた妹は顔を上げた。
「今日は特に大事な用はないし、君達と存分に遊べるよ」
「わーい、やったー!」
遊びたいわけではないのだが、一応子供らしくはしゃいでおくコナン。
その様子を見ていた蘭が驚いた風に目を見開き、ずいっと前のめりになる。
「ほ、本当にいいんですか?特にって事は何か用事があるんじゃ……」
蘭の不安にゆるゆると首を横に振る。
閉じた手帳を、ハンガーに掛けていたジャケットの内側のポケットに直して、羽織った。
襟を正しく伸ばしながら「それほど大事じゃないよ」と、安堵の言葉を口にする。
「たまには息抜きもしたいしさ。だよね、姉さん」
チラリと不満げな姉を一瞥し、尋ねる。姉はムッと口を尖らせると、不満を訴えた。
「A風情が。何もかもわかった風に言うんじゃない、怒るわよ。――遊び足りないのよ、ここ最近」
そうして、彼らは共に遊ぶ事となった――いったい、何故なんだろうか。
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