2.笑顔 ページ3
Aの情報力はそれはそれは素晴らしかった。それに愛嬌もあり、誰にだって好かれるその性格。
上の人間は、彼女の存在が組織にバレることを異常な程に恐れた。
だからだろう。
潜入捜査をする俺は、彼女のお見舞いを極力禁じられた。
もちろん納得いかなかったが、どこかで安心している自分がいたんだ。
きっと、彼女を前にすれば、また泣いてしまうから。現実を受け止めきれなかったから。
でも今日は、彼女の事故にあった日。
逃げていてはダメだと自分に喝を入れて、花屋に立ち寄った。
彼女の好きな花はなんだったかと、楽しかった頃を思い出しなんだか虚しくなった。
自分でも馬鹿なことをしている自覚はあった。でも、やっぱり思い出すのは彼女の笑顔だった。
「なあ、A。お前のいない毎日はつまらないよ」
動かない彼女を前に、そう話しかけた。
ぽっかり穴の空いたような気分に、込み上げる何かを吐き出すように彼女に問いかけた。
「…いつになったら、目を覚ましてくれるんだ、？」
病室に響く自分の声。彼女に話しかけているのに、まるでそれは独り言のようだった。
医師はいったんだ。
「目覚めないのは彼女の意思では？」
氷水をかけられたかのように、頭が冷えた。
そう、そうだ。あの日彼女は笑っていたんだ。
自分に迫り来るトラックを見て、俺の顔を見て、綺麗に微笑んだ。
そんな彼女の笑顔を前に、俺は動けなかった。目の前でひかれそうになっている彼女を助けようともしなかった。否、出来なかった。
本当はわかっていたんだ。
彼女は“死”を望んだ、
『零さん。人って死んだらどうなるんだろーね』
『もし、もしね。私が死んだら…。零さんは悲しんでくれる…？』
いつだって、笑顔で周りを照らす太陽のようだったA。
その反面、時折垣間見える死への願望。
生きることへの執着のなさ。
何が彼女をそうさせているのか。俺には何もわからなかった。
自分の情けなさに思わずため息をついた。
「はぁ…。今日も徹夜だな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 565人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆい - 更新待ってます！！！！！！黒の組織との関連や、今後の弟との関係など続きが凄く気になります！！がんばって下さい！！ (2021年1月2日 20時) (
レス) id: 2566c9034c (このIDを非表示/違反報告)
アイスある - うわぁ！絶対面白くなる！タイトルにも内容にも惚れました更新待ってます！ (2021年1月2日 18時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
さとう。(プロフ) - コナン小説の中で一番好きです…！！更新ありがとうございます！！待ってました！ (2019年7月17日 20時) (レス) id: 15c53c1034 (このIDを非表示/違反報告)
和美/美香 - 初めてまして、続き頑張って下さい。初コメントです！昨日から読んでいました。新ちゃんと零君、どっちに好きなるのかも楽しみです。夢主ちゃん、早く起きて(泣) (2019年5月27日 20時) (レス) id: 1f2c06e01c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねむた。 x他1人 | 作成日時：2019年5月26日 13時
