… ページ28
デイヴィスを送り出したあと、革張りの椅子に凭れたところから記憶が途絶えていた。
頭を
そろそろ放課後になる頃だろうか。
どうやら、そのまま眠ってしまったみたいだ。
はっとして、自分の周りを見渡す。
部屋の中はしん、と静まり返っていて、微かに外から響く朗らかな生徒たちの声に少し落ち着きを取り戻した。
この部屋は…気を抜きすぎてしまうなぁ…。
体を起こすと、ぱさ、と音がして白と黒のブランケットがずり落ちた。
ご丁寧に赤いタグがついたそれに、かけてくれたであろう人物を思い浮かべて頬が緩んだ。
立ち上がって伸びをする。
普段、一人で昼寝をする事なんて滅多に無いAだったが、久しぶりの陸での生活に、まだ感覚が戻せていないようだった。
ブランケットを丁寧に畳んで椅子にかけ、デイヴィスの部屋をあとにした。
外はすっきりと晴れていて、まだ夕方まで時間がありそうだ。
鏡舎に向かうにはまだ早いか…。
サバナクロー寮はサバンナ特有の気候を模している為、本来なら海で暮らすAには適しているとは言えない。
そのため、Aがサバナクロー寮を訪れるのは、いつも日が沈んで涼しくなってからだった。
適当に歩いていると、メインストリートのハートの女王の石像が黒焦げになっているのを見つけた。
ハートの女王の石像が、黒焦げに…？
思わず二度見して、恐る恐る石像に近付く。
残念なことに、見間違いではなかった。
それはもう、真っ黒に焦げていた。
煤で汚れたハートの女王を前に立ち止まる。
これは…直した方が良いのか…？
戸惑いながらもシャツの胸ポケットからマジカルペンを取り出した。
焦げた石像を元に戻す…。
この場合どんな魔法を使えばいいのだろうか、と考え出したところでAの纏う空気がすぅ、と澄んだ。
視線を斜め下に向けて、手の中のマジカルペンを弄ぶ。
動いているのは視線と手だけ。
まるでそこだけ時間が止まってしまった様に固まるその仕草は、彼が何かに集中する時の癖だった。
…そういえば、最近はあまり魔法を使ってなかったな。
今度どこかの授業に顔を出そう、とそこまで考えて、目の前の石像に向かってマジカルペンを軽く振った。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
Aが去った後の部屋。
綺麗に折り畳まれたブランケットを手にしたデイヴィス・クルーウェルは、愛用の香水の香りが消えたそれに満足そうに目を細めた。
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Q-02 - 描写が細かくて、読みごたえがあって、本当にこの作品が好きです...。 最近の生きがいですありがとうございます。 お体に気を付けて、更新頑張ってください! (2020年7月18日 10時) (
レス) id: ada86e6bec (このIDを非表示/違反報告)
きらり(プロフ) - ぐへへ描写が分かりやすくて神ってまするるるる（）毎回楽しみに見てます。頑張ってください! (2020年6月8日 16時) (レス) id: 6563db8e4a (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - 好きですめっっちゃ好きです(語彙力)続きを楽しみにしてます！！！！ (2020年5月28日 6時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
七 - コメント失礼します！性癖ど真ん中に刺さりました...。好きです！！！更新楽しみに待ってます。 (2020年5月21日 14時) (レス) id: 7f8beb23ed (このIDを非表示/違反報告)
酢昆布たゃん(プロフ) - 好きが液状化して全身の穴という穴から吹き出そうなくらい好きです。とんでもなく好きです。更新超楽しみにしてます。頑張ってください (2020年5月19日 1時) (レス) id: d836fbb346 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒蓮 | 作成日時：2020年4月28日 5時
