memories__① (ページ11)

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奨からの電話を待っていると机の上に積まれたワークが目に入る。

(…あ。)

夏休みの課題は後回しにするタイプの私。

まだ大丈夫だと余裕でいるうちに課題の存在を忘れ、気づけばあと数日で夏休みが明けるところまで来ていた。

慌てて課題を見ると全体的な量はそこまで多くないものの、苦手な化学のワークの割合が大半を占めている。

花火大会帰りの疲れを癒す時間もなく課題にとりかかる。

教科書を見ながらやっているものの、分かる問題は分かるのに分からない問題はさっぱりだ。

化学の川尻先生はかっこよくて私の推しなのに、化学は一向に好きになれる気配がない。

先生は質問に行ったらわかるまで丁寧に教えてくれるけど寝たら忘れてしまうし、実際のところは半分も理解していない。

数分後、これは朝までコースだと踏んだ私は飲み物と軽めの夜食を取りにキッチンへ行く。

アイスカフェラテを作って冷蔵庫から見つけた枝豆を抱えて部屋に戻ると、奨からLINEが来ていた。

奨ちょっと早いけどかけて大丈夫?

Aいいよ!

やばい、緊張する。

好きな人と電話なんて今までも何度もしたことあるはずなのに、こんなにドキドキしているのは初めてだ。

心の準備をする余裕もなく電話がかかってくる。

深呼吸して電話をとる。

『…もしもし、？』