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宣誓のシジジーを / 2 ページ19

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中学生の女の子。それが忍田の率直な感想だった。間違いではない。
事実、小鍛冶Aはただの中学生だ。近界民なんてもの存在せず、侵攻も、戦死も、何も知らない。数年前の三門市と何ら変わらない穏やかな世界で"何もない"を享受していただけの少女だった。

とうてい近界民には見えない。それに尽きるのだ。


「小鍛冶さん、だね」
「は、はい!」

緊張した面持ちで返事をするAを、忍田はとてもじゃないが恐ろしい力をもちあわせた人間とは思えなかった。緊張しているのは分かれど、殺意なんて一切感じない。これが演技だとしたら負けを認めざるを得ない名演技だ。

「君の住んでいた場所はどんなところだったか教えてくれるかな」と言った忍田に対して、Aは不思議そうな顔をした。兵であれば祖国の情報を流すわけが無い。それなのに目の前の少女は惜しげも無く語り出す。数年前の三門市と変わらない、ありふれた生活の話を。なんの躊躇いもなく語り出したそれに内心驚きつつも、軽い質疑をそのまま続ける。得意なこと、何が苦手か、近界民を見てどう思ったか、などなど。

それに対してAは隠すことなく全てを話す。

もしここに"嘘を見抜ける人間"がいたら話は早いが生憎いないため、忍田は長年の経験を元に目の前の話を探る。



「最後にひとつ」
「はい」
「我々は君が敵兵かと疑っている」


目を丸くさせる。

ぱち、ぱち。瞬きを2回。


「そう言われて、どう思ったかな」





「……尋問の後に、殺されるのかなって思いました」


素直な感想に忍田は表情を崩した。厳しい目元がとたんに柔くこぼれ落ちて「すまなかった」と小さく謝った。隣で話を聞いていた迅は目を細める。話の決着は着いただろう。あとは流れに身を任せよう、と迅はAと忍田の顔を見比べる。Aは不安だという表情のまま忍田を見つめている。



「ってわけですよ、忍田さん」
「……わかった。今日は一旦これで失礼させてもらおう。怖がらせてすまなかった」


忍田は再度Aに謝罪を零すと迅を見つめた。
お前の示した未来を、信じると。そんな瞳だったと迅は思った。




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作者名:40 | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年6月6日 22時

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