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ぽつん、
とこの世界に1人取り残されてしまった、
そんな感覚が襲いかかり、一瞬で音が消える。
ふわふわとして、足が地についてないように思えた。
自分よりも低い位置から聞こえる
酷く震えた俺の大好きな声。
上げた口角を下げまいと必死になるしかできない。
だから、
「そうやんな、」
って、声が漏れた
ああ、なんかもっと、
頭を強く刺激するような、
意識を失うような、
そんな痛みを想像していたのに。
やっぱり半分だけ、諦めが入っていたのか
涙すらも出てこなかった。
「ごめんなあ、
急にこんなこと言われても気持ち悪いやんな、
ほんっとごめん、こんなん忘れて 」
「ちがう!」
涙を誤魔化すように次々と出てくる言葉を、
無理矢理止めるように声を荒らげたのは紛れもなくAで。
え?
と、間抜けな声が出た。
「……そういうごめんじゃなくって、
今までごめなさい、って、いう、ごめん、
それに、気持ち悪くなんかないよっ
うれしかった、だから、だから……気持ちを、自分で否定しないで、っ」
バッと顔を上げたA。
大きな瞳はゆらゆらと揺れる。
その瞳を見て、心臓が飛び上がった。
透き通りキラキラと輝く海のような、
君の瞳は、
綺麗で儚い、
.
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────セルリアンブルーを、写していました
.
ああ、なんで
今まで忘れていたんだろう。
何度も繰り返された、夢の中のあの女の子は
君だったのに
「………俺、っ」
俺はこの瞳が、Aが大好きだったのに。
なぜ忘れてしまっていたのだろう。
一粒の雫がAの頰に伝っていく。
触れたくて、触れられなくて、
「……ごめん、」
小さく呟いた。
君はそんな俺に、微笑んで。
「わたし、裕太くんに出会えてよかった、っ」
コンクリートに咲く、力強い一輪の花のように。
強く、尊く。
言葉を落としていく。
「会えなかった9年間、裕太くんを忘れた日なんてなくって、
ずっとずっと、会いたかったんだよ、」
俺から目線を外し
伏し目がちに話し始めたAを、俺はじっと見つめた。
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高瀬その(プロフ) - コメント失礼します。今日この小説を読んだのですが二人の気持ちとか凄く伝わってきて泣けるけど本当凄くいい話だなあと思いました…!これからも応援しています、頑張って下さい! (2017年12月29日 9時) (レス) id: 68845d469f (このIDを非表示/違反報告)
あまみや。(プロフ) - ルイルリ@雨傘さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです…!!読んでいてちょっぴり胸が苦しくなるようなそんな作品を書きたかったので、本当に嬉しいです。頑張ります!ありがとうございました! (2017年8月6日 3時) (レス) id: c73d1202f1 (このIDを非表示/違反報告)
ルイルリ@雨傘 - コメント失礼します!!すごくいい話ですね!!泣ける…こんな話を書いてみたい…更新頑張ってください!!応援してます!! (2017年7月25日 12時) (レス) id: 27bfa0ba5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまみや。 | 作成日時:2017年1月10日 17時