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はぁ、っというため息が頭の上から聞こえる。



ああ、きっと俺の願いなんか考える気もないんだろうな、



そう思った。





悔しい、



こんなに好きは溢れて仕方ないのに、




目の前の何不自由なく生きてきたこいつに、



こんなにも呆気なく取られてしまうなんて。




ずっと想ってきたのに。



君の温もりを感じたくて仕方なかったのに。







また、涙がこぼれそうになった時だった。








「………じゃあ、奪えばいいじゃん。」




「……は、?」






奴の口から出たのは予想を遥かに超えた言葉。



顔を上げ、目を見開いた。






奪う?



どうやって?



だってもう結婚、決まってるんだろ?




せっかく手に入ったのに失うなんてことしたくない。





だってそんなの耐えられないし。






そう思い、上げた視線をまた足元に戻した。









「泣くほどあいつが欲しいなら、俺から奪えばいいだろ!!!




それとも怖くてできないの?




もし断られたらとか失ったらとか、考えてる?




それってただ、自分が傷つきたくないだけじゃんか。


結局は自分?



君は、好きな人を他の男に取られてヘラヘラ笑って“お幸せに”って言うの?




本当に好きなら、愛してるなら、奪って駆け落ちでもなんでもすればいいだろっ!?」








ガタン、とまふまふは勢いよく立ち上がり、椅子が倒れる。

俯く俺の胸ぐらをガッと掴むと
そう言いながら、眉にシワを寄せた。





視線が合えば、数秒だけ見て目を逸らした。





図星すぎて、返す言葉が見つからなかったからだ。






そうだ、そうだよ、



だって、君が最初にいなくなったとき。

俺は、たくさん後悔した。



なんで涙を流す君を引き止めなかったのか、

腕を引かなかったのか。



君の後ろに立つ、母親の目が怖かったから。

足がすくんだんだ。




まるで、“もう娘に関わるな”と、言っているみたいで。




連れ出したら、俺まで傷だらけにされてしまうんではないか、と。


怖かったんだ。




傷つきたくなかったんだ。





ごめん、A。






今度はちゃんと、君を守るから。


逃げたりなんかしないから




傷つけないから




ちゃんと正面からぶつかるから。







俺の大好きな笑顔で、笑ってくれればそれで。

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高瀬その(プロフ) - コメント失礼します。今日この小説を読んだのですが二人の気持ちとか凄く伝わってきて泣けるけど本当凄くいい話だなあと思いました…!これからも応援しています、頑張って下さい! (2017年12月29日 9時) (レス) id: 68845d469f (このIDを非表示/違反報告)
あまみや。(プロフ) - ルイルリ@雨傘さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです…!!読んでいてちょっぴり胸が苦しくなるようなそんな作品を書きたかったので、本当に嬉しいです。頑張ります!ありがとうございました! (2017年8月6日 3時) (レス) id: c73d1202f1 (このIDを非表示/違反報告)
ルイルリ@雨傘 - コメント失礼します!!すごくいい話ですね!!泣ける…こんな話を書いてみたい…更新頑張ってください!!応援してます!! (2017年7月25日 12時) (レス) id: 27bfa0ba5b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あまみや。 | 作成日時:2017年1月10日 17時

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