【鬼滅の刃】喩え貴方を喰ろうとも 弐

伍拾.蟲柱 ページ5

「ごめんください」



綺麗な声が道場に響き渡る。


その声の持ち主を探るべく入口へと顔を向けた。





「やはりここにいらっしゃいましたね」





現れたのは蝶の髪飾りを身につけた女性。



胡蝶しのぶだった。


蟲柱の彼女にはあまり近づきたくない。

ぷすりと刺されて毒が体内に入れば一溜りもないのだ。



何をしに来たのかと義勇が問いかける。





「冨岡さん 確か私との合同任務が課せられていたはず

ここで鍛錬をするのは構いませんが早く準備していただけませんか」




顔は笑っているが、どこか怒っている様子の蟲柱。

その姿を一瞥した義勇は汗を拭い、私に向き直った。





「A すまない

一週間の合同任務が今日からということを忘れていた」


「冨岡さん 謝る人間を間違えていると思いますが」



「すみません蟲柱 悪気は無いはずです」







この合同任務というのは私にとっては地獄だった。


義勇と二人だけなら鬼は喰えるが、他の鬼殺隊全ての人間は私が人だと思い込んでいる。



だから食事には絶対に有りつけない。






「義勇 私は大丈夫です」



今日からまた一週間の断食。


義勇といるからには仕方の無いことだと我慢出来るが、きっと人を喰う鬼には耐え難いことだろう。




そんな事を考えていると、ふわりと私の真後ろから匂いと共に腕が絡まってきた。


感覚と匂いで、蟲柱が私を後ろから抱擁していることが分かった。

伍拾壱.任務→←肆拾玖.感謝

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す