君とわたしのすれ違い ページ3
.
カナダに来てから半年が経って、結弦があまり家に帰って来なくなった。シーズンに向けての練習が忙しくなり、夜遅くまで練習をしてそのままリンクに泊まり、次の日の朝早くから練習をしているのだ。
スケートをすること。それが彼の仕事であり人生の全てだ。だから寂しいなんて思ってはいけないんだろうし、思っていたとしても口にしてはいけないんだとおもう。…でもやっぱりさびしい。
ひとりで寝るには大きめのベッドに身体を横たえると、隣に置いてある枕から微かに結弦の匂いがして、情けないことに涙が出てきてしまう。
いろいろな不都合があって結弦とは夫婦別姓を取ることになっている。将来、結弦が引退してから夫婦同姓にすることに決めていた。だからわたしの苗字はまだ(人1)のままだ。
ぎゅっと結弦の枕をつかんで目を閉じると、睡魔がやってきた。やっぱり、結弦の匂いはすごく落ち着く。優しい気持ちになれる、温かい匂いだ。その匂いに包まれながら、睡魔をしまいこむようにそっと目を閉じた。
目を覚ますと朝になっていた。結弦の枕の裾を握りしめたまま眠ってしまったらしく、その中心がわたしの涙で濡れていた。
ああ、結弦に会いたい。
涙で濡れた枕を見ながら、ただそれだけが頭に浮かんで離れなくなってしまう。
抱きしめて、キスをしてほしい。
そしてどうか、好きだよって言って。
結弦は真面目だし、基本的に一途だから、わたしのことだけを好きでいてくれると信じている。別に疑っているわけじゃないし、問い詰めたいわけでもない。
ああ、寂しいんだな、わたし。
結弦の匂いがする枕カバーをとって、洗濯カゴのなかに放り込んだ。わたしの涙ごと洗ってしまえば、少しは気持ちも晴れてくれるかもしれないとおもいながら、着替えもせずに洗濯機を回した。
スイッチを押して、ぼーっとそれを眺めていると、お腹が空いていることに気づく。キッチンで適当に何か作ろうと、のそのそと家のなかを移動する。
結弦、ちゃんとご飯食べてるかな。
結弦もわたしも、もともと多く食べる方ではない。昔、多少食べなくても平気だからと言って、よく食べることをわすれて結弦に怒られた。
優しい結弦はブツブツと文句を言いながらもパンを買ってきてくれて、食べさせてくれたんだっけ。
優しい思い出を巡らせていると、さらに結弦に会いたくなったので、考えるのをやめてぶんぶんと首を大きく横に振った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るみな(プロフ) - みのりちゃん！みのりちゃんってTwitterの垢消した？ (2014年9月19日 20時) (
レス) id: 02d437f7a8 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - 愛さん» 遅れてしまいました、すいません。こんな感じでよろしかったでしょうか。よろしければまたリクエストよろしくお願いいたします！ (2014年8月21日 15時) (レス) id: d5267a70cb (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - yuriさん» お家のお話ですね、遅くなって申し訳ありません、がんばって書いてみますので少々お待ちください。 (2014年8月19日 16時) (レス) id: d5267a70cb (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 日本選手との絡み！リクエスト答えてくださってありがとうございます！もうドキドキでした笑 (2014年8月16日 8時) (レス) id: e7a06dc620 (このIDを非表示/違反報告)
紗夜(プロフ) - はなこさん» こんばんは！ありがとうございます！うれしいですー＊ 書くのとても難しかったです笑 そう言っていただけるとすごくうれしいですー！ええ、そうなんですか！？ わたし羽生さんの次に町田さんがすきなのですが、わたしの世界観で勝手に町田さんを書かせて頂きました笑 (2014年8月14日 22時) (レス) id: d5267a70cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紗夜 | 作成日時：2014年7月25日 13時
