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「Aちゃんは明日仕事?」
『明日は何と!お休みなんです〜』
未可子さんと駅で別れ、淳弥さんと電車に乗り、最寄駅から家までの帰路をゆったり歩いていた。
何気ない淳弥さんの質問にほろ酔いの私は少し上機嫌で明日の予定を答えた。
「っはは、気分良さそうだね〜」
『久しぶりに飲んだのでいい感じに酔ってますね』
へへっ、と笑いながら小学生の頃によくやったように縁石に乗って歩いてみる。
「足外して転んでも助けねーぞー」
『えー酷いですー』
「うるさーいこの酔っ払いめー」
適当にあしらう淳弥さんにべーっと舌を出して煽ってみる。
小学生かよ、とツッコみながらこっちを見て軽く笑う淳弥さん。
(……ん?何だろ……これ……)
胸の辺りに覚えた違和感に「?」が浮かぶ。
その正体は考えたけど分からず、まあいいかと考えることを手放した。
『そう言えば淳弥さんも明日休みって言ってましたよね?』
「うん、そうだよ」
『何するんですか?』
「んーそうだなあ……この前新しく出来たいい感じのカフェを見つけてさ。そこでコーヒー飲みながら読書して、その後は散歩かな」
『何だかおじいちゃんみたい』
「失礼だなおい」
『ふふっ、ごめんなさい。でもゆったりな時間でいいですね。私も、カメラを持ってですが、散歩するの好きです』
「へ〜写真撮るの好きなんだ?」
『はい!好きです!』
「今まで撮った写真とかあるの?」
『あっ、ありますよ』
そう言って私は縁石から歩道側へ降り、スマホを取り出してカメラフォルダを開いた。
今まで撮った写真は全て1つのアルバムにまとめてあるので、すぐに見せることが出来た。
「……俺、写真とか素人だからあれだけど、何か、上手く感じる」
『あははっ、ありがとうございます』
淳弥さんは感嘆の声を漏らしながら左に指をスライドして次々と写真を見ていく。
「これ。……すげぇいい」
今までなかった穏やかな、落ち着いた、そして心地良い低音の声で呟いた淳弥さんの声に自分の心臓が1つ高鳴ったのを感じた。
スライドの指が止まって画面に映し出されていたのは、青空と窓とカーテンが映った部屋の一角の写真だった。
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作者名:sen | 作成日時:2023年9月1日 18時