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「キャストさん入られまーす!」



キャストさんの入りを知らせるスタッフの声が後ろから聞こえた。
準備をしていた手を止めて私は振り返る。
視界には、周りにいるスタッフに挨拶をしながら入ってくるキャストさんの姿が入った。


今日は、今大人気のアニメ『キライになりにきた!』のイベント当日。このイベントでは、主にキャラクターの声を務めるキャストすなわち声優が出演し、トークショーやちょっとしたゲーム、そして生アフレコをする予定となっている。本番は13時からと18時からの2部制となっており、準備やリハーサルがあるため、現在の時刻10時と、3時間前から声優さん達が現場入りしている。


私はヘアメイクアップアーティストとして仕事をしており、こういった声優さんまたは俳優さんなど、芸能人の方々のメイクとヘアセットを担っている。



「あ!Aちゃん!」



どこからか可愛い声で私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
その声の主を探そうと視線を動かしていると、こちらに優しく手を振りながら向かってくる姿があった。



『真礼さん!』



その人は大人気も大人気な内田真礼さん。
可愛い声と少年声のギャップや、整った容姿と親しみやすい人柄で業界内外問わずいろんな人に好かれている。大人気の理由がここにあることがよく分かる。



「Aちゃんいるとテンション上がっちゃう〜!」

『ふふっ、ありがと!そして何と、真礼さんの今日の担当、私!』

「え!?ほんとに!?嬉しい〜〜〜!」



きゃっきゃっと喜びながら私の目の前にあるイスに腰をかける真礼さん。私より歳上だけど、敬語は堅苦しいから外してと言ってくれた気さくな人。おかげで私も真礼さんに会うと嬉しいし楽しい。



「えー!姉さん羨ましい〜!」



ふと聞こえてきた声に顔を向けると、私と真礼さんの左斜め前に座っていた石川界人君だった。
「俺で悪かったな」と同業者かつ同期でもある難波君がスパーンと界人君の頭をはたきながらツッコんだ。
「いてっ」と頭を押さえて難波君を見る界人君だったが、「はいやるよー」と難波君に頭を掴まれて鏡に向き直されていた。



「あんな感じだけど、何だかんだ相性いいよねあの2人」

『うん、そう思う』



あははっと笑いながら、私も真礼さんのメイクを始めた。









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作者名:sen | 作成日時:2023年9月1日 18時

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