Cocktail [Zweite] -HSJ-

＊ ページ24

SIDE＿Arioka


in「…ごめんね。痛い思いさせちゃって。」
ar「俺が勝手にやっただけだし、気にしないで。大丈夫。」


ぽんぽんと話が弾むわけがなかった。
話したいことはいっぱいあるはずなのに、何かに遮られてるみたいに言葉が出てこない。

その原因が、さっきの夢だってことぐらいはすぐに分かった。


in「…大ちゃん。」
ar「なに…？」

in「強くなったね。
　俺、置いていかれた気がしてしょうがないんだよね…」

ar「え…」
in「…俺は、ずっと自分を誤魔化してるだけだから。
　あの時だって同じ。大ちゃんを傷つけることで自分に言い訳してた。自分は何もできなかったってことを認めたくなかったから。
　バーで挙兵を聞いたときも、その引き金を引いたのは俺なのに、人のせいにして逃げようとした。
　少しも変わってない。変われなかった。」


そう言って、目を伏せながら笑った。

…ほら、良い人だ。
あんなこと言うわけがない。あれは伊野尾慧じゃなかった。

そう思えたら、自然と笑顔になれた。
体が軽くなった気がした。

…今なら。


ar「…伊野ちゃんはちゃんと変われてるよ。
　だって、もう誤魔化してないじゃん。自分が弱かったって向き合えてる。

　俺、知ってるよ？自分の弱さを認められる人が、1番強いってこと。

　俺達2人とも、もう弱くなんてない。
　偽りなんてもう何も無いじゃん。

　もう、誰も俺達のことなんて責めないよ。」


もう、真意を知ろうとなんてしなくていい。

不透明な視界はもう晴れた。
眩しいぐらい、透明で透き通った世界。

ずっと望み続けた、君の笑顔がよく見える世界。


君に伝えたいのは、謝罪でも、許しを乞う言葉でもない。



感謝なんだ。



in「……ねぇ、大ちゃん。
　俺ね、大ちゃんに飲ませてあげたいお酒があるんだ。」
ar「え、なになに！？」


in「キールってお酒。」


そうだね。


ar「もちろん、薮ちゃんのバーだよね。」
in「あそこ以外どこにあるの？ww
　とにかく、戦争が治まったら2人で一緒に行こう。」




もう、俺達にプレリュード・フィズは必要ないよね。




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