Cocktail [Zweite] -HSJ-

＊ ページ18

SIDE＿Arioka


ar「はぁ…！？」


…王宮内は、既に大混乱だった。
逃げた裏切り者を探す声も、裏切り者を訪ねた怪しい奴を疑う声も、怒号も叫び声も入り混じる地獄だった。

結局同じかよ…


in「大ちゃん…？」
ar「…大丈夫だよ。」


もう、繰り返さないって2人で決めたから。
俺達なら大丈夫。だって俺達だもん。
なんてことを己に言い聞かせて、伊野ちゃんの綺麗な手を握り締めた。

どこに行けばいいんだろう。
そんなことを悩んでいたら、1番大きな声が響き渡った。


「月の国の人間が居るぞ！！！」

in「っえ…？」


月の国の人間。戦闘態勢を整えた太陽の国からすれば、もう敵でしかない存在。
ここに居る月の人間は間違いなく、隣に居る伊野ちゃんだった。


ar「…逃げるよ。」
in「でも、っ…」
ar「いいから早く！！！」


震える手を握って走った。
俺より背丈は高いはずなのに、小さく縮こまる体を支えながら走った。
喉から湧き上がる不快な味も、その音しか聞こえなくなるぐらい大きく跳ねる心臓も、段々上手くできなくなる呼吸も、全部無視して走った。

それでも、どうあがいたって勝てるはずがなかった。


「殺れ！！」


敵と裏切り者。
どっちにしろ、この国にとっちゃ邪魔者でしかない。


それでも。


ar「っぐ…！」
in「………だ、いちゃ…？」


……君には、帰るべき場所があるでしょ…？



力が入らなくなる体。

朦朧とする意識。

痛みが増していく背中。

首に伝う温かいものは、君の涙かな。



えへへ、お揃いだね。
そんな風に笑えればよかった？

でもね、今はこの言葉しか出てこないや。



“ごめんね。”

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