7.私とわたしの秘密 ページ7
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太宰の首元に刃が置かれる。Aはその様子を薄く見開いた瞳で伺っているが、ただ伺っているのみだ。口出しもしない。太宰への圧倒的な信頼感は「勝てない」ことに起因する。此処でくたばってくれるような男ではない。さて、どんな切り口で足元をすくってくれるか。
「いいことを教えよう。明日、五大幹部会がある」
テノールの、悠然とした声音がやけに鼓膜にこびりついた。は、と声がひとつ漏れた。冷や汗が頬を伝う。
「莫迦な。あれは数年に1度、組織の趨勢を決定する時だけ開かれる極めて強制力の強い意思決定会議だ、あるならとっくに連絡が……」
「理由は私が先日組織上層部に、ある手紙を送ったからだ……で、予告するんだけど、君たちは私を殺さない。それどころか、懸賞金の払い主に関する情報の在処を私に教えた上でこの部屋を出ていく。それも、中也は内股歩きのお嬢様口調でね」
「アァ?」
「私の予言は必ず当たる。知ってると思うけど?」
「この状況で何が……手紙?」
「手紙の内容はこうだ。太宰、死没せしむる時、汝らのあらゆる秘匿、公にならん」
「まさか」
太宰が次に言葉を紡ぐ前に、Aが、喉奥でひゅっと息だけで言葉を発するように呟いた。
「汝らの、あらゆる秘匿」
言葉で、言葉をなぞる。
「……そうだよね。太宰くんは、そういう人だから。私の秘匿を公開しない理由もない」
冷や汗まじりに漏れた怯えた声は、太宰や中也が初めて耳にするものだった。中也は片方の、太宰の首元を掴む手はそのままに、しかし利き手に持っていたナイフの方は下ろしてしまう。
ーーーーーこいつは。
「そうだよ。検事局に渡れば、ポートマフィアの幹部全員を100回は死刑に出来る。幹部会を開くには、十分すぎる脅しだと思うけれど?特に君には都合が悪い話だ。ねえ、Aちゃん」
ポートマフィアの幹部を100回は死刑に出来る。
これもまた、自分の命に関わるほど大切な人の、恐ろしい話で。
「こわい」
「ははっ、こわいなぁ」
みんなの目が。
ステージライトが、ただ私だけに眩しく降り注いだ。上手も下手も関係ない。日本にはないくらいの大きな箱で、観客席に座る皆がオペラグラスを片手に私を感激している。
舞台の中央で塞ぎ込む私。座り込んで、立つ足はないと言った様子で、黒髪の私は頭を抱えた。
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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時