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26.愛を教えてくれた人 ページ26

*


 嫌な夢を見た。わたしが世間から厭われた日の夢だ。情景は鮮明に思い出すことが出来るのだけれども、やはり深層心理でも思い出したくないのか、ややぼやけた夢だった。異能力の行使から目覚めたのは一週間後のことだった。三社鼎立の終了の旨を知らされる。

 泉鏡花くんが、正式に探偵社に入社したという。新しいことを始めるのは、赤ん坊が少々熟した程度、リンゴで例えるならばせいぜい青くなりつつある位の齢の少女には難しい。まあとはいえ、経験は齢の割に豊熟な彼女は、されどもただの14歳に過ぎぬのだ。普通の子であったならば、義務教育課程中のコ。

 そんな子が、新しいことを始めるのは一般論よりもずっと難しい。

 しかも「新しいこと」は探偵社に入社することで、それも「ウチ」を辞めること前提のものである。
 どうも探偵社の社長の異能を介することになって、ようやっと自分の異能をコントロールすることが可能になったようだ。

 鏡花は優秀だった。わたしのベッドの横にたたずむ絹のような長い金髪をひっ下げている男は淡々とそう云う。それにわたしは「そう」と返してやる。

「たられば、探偵社で活躍する」

「暗殺のスキルも、きっとどこかで役に立つ。素人判断だけど、確証はないんだけれども、何かをひとつ成し遂げた上で、世間で役に立たない事なんて何も無い。暗殺に限らずね」
「ふっは、使えない上司への叱責のつもりか?」
「気づいちゃった?」

 目尻を下げて困ったように笑ってみせる。
 長時間寝転がっていたせいか、髪質がパサパサしている。邪魔な横毛を振り払って、布団に肘を立てた。下から見ているもんだから、彼の、コーカソイド特有の形の良い鼻がよく見える。

「うん.........うん.........褒めてるの。鏡花くんの教育、お疲れ」

 へらりと笑ってみせた。顔の上の方の筋肉が上がるのを感じる。......間もないくらい、自然と出た笑みだった。
 しかし、彼からの返答がない。どうしたものだろうかと薄めていた視界を開くと、冷えたアイスブルーの、しかしじっとりした熱い視線をこちらに送る彼がそこに居た。かっと顔がじわじわと熱を持っていくのを感じる。どうしたの、と聞く前に彼の腕がわたしの体に絡みついた。流石に成人男性の体は重くて耐えきれず、気がつけば枕と彼の体に挟まる形になっている。


「幹部?」


 どうしたのだろうと声をかけてみるも返答はない。


*

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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時

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