12.どうしたって人助け ページ12
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Aはいそいそと女子トイレを出る。タイミングが悪く、黒蜥蜴の面々を眼前に待ち構えてしまうことになり、その神妙な面に薄ら笑いが漏れ出てしまう衝動を抑えられなかった。
広津の姿を視界に捉え、「うーん」とわざとらしく腕を組んでみせた。
「広津さんも、あそこまで言わなくたっていいのに。向いてる向いてないは誰にだってあるじゃない?彼女は一生懸命なんだから、その誠実さを評価してあげないと」
彼女、とは泣き腫らした目元でこの場を去っていった樋口一葉のことである。
きらりと、広津の片面レンズの奥にある瞳が光ったような気がした。眉根を深く寄せ、「これから説教します」といった様子を隠しもしない。
「昔からですが、貴方様は裏社会に生きるにはあまりに楽観的すぎる。重大な任務失敗の連続は、何れ組織の破綻を招くこととなる」
「楽観性は大事です。そう思わなきゃやっていけないこともある」
静寂が訪れ、粛然たる二人の様子に端目に映る壁に寄りかかった立原は息を呑んだ。ぽたりぽたり、とどこからともなく滴り落ちる水の音が聞こえて来る。
わたしが楽観的であるのはそうでなくてはならないからだ。
ポンコツな異能力も、生まれ持った不幸も、顔を表に晒すことを禁じられた理由も、何もかも全てにそれは該当する。
「口出し過ぎちゃった。またね、銀くん、立原くん」
完璧な笑顔をそこに浮かべ、彼らにひとつも目をやることなく去っていったAには、立原が神妙そうに彼女の方を見詰めていたことなぞ知る由もなかった。
樋口一葉は驚きを隠せなかった。
もたついてしまった故に不自由になった足を、今に敵に殺られんと思ったその時に、足が銃弾を跳ね返した事にだ。嗚呼、これは準幹部の異能か。後方から自分を信頼していないのだと悲観していたはずの黒蜥蜴がやってきて、準幹部は小さな体躯で立ち向かおうとした強大な相手をみるみるうちに滅していく。
涙が溢れそうになるのを天を仰いでしのぎ、目的の地点へと走っていく。
愛する人を助ける為に。
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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時