34.さようなら ページ34
チュンチュンと、小鳥のさえずりが聞こえる。
カーテンから差し込む光が、私を導いてくれているようだ。
いつもの私服に腕を遠し、鏡を見て服装を整える。
ふと、バターの香りがして、鼻をくすぐった。
靴下を履き、髪型を整えて、早足で階段を降りる。
「……おはよう!A!休日なのに早いわね」
『ちょっと空港いってくる!』
「まぁ!そうなの、いってらっしゃ、…………って、空港!?」
『いってきまーす!』
現在の時刻は7時。本当は、6時半に起きようとしたが、30分ほど寝坊。隣の市まで歩きで35分ぐらいかかる。
テーブルにおいてあったバタートーストを口に含みながら靴を履き、急ぎ足で家をあとにする。
隣の真冬ん家を見てみると、名札は外れており、車もなかった。
もういったのかよ……。
と、文句を垂れつつ、私は全力で走った。お金なんて持ってきてないから、走るのみ。
トーストを食べながら走るなんてすごく辛い。けど、真冬の方が、精神的にもすごく辛いはずなんだ。
私は駆けた。1分、1秒でも速く走れるように。
.
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7:50。無機質な文字は、完全にそれを表していた。
「真冬?もうそろそろいかないと……」
『……あと、あとちょっと!……お願いだから……』
お母さんとお父さんはキャリーバックをもって、不安そうに僕を見つめる。
Aから通話がかかってきたけれど、本当はあれでお別れなんてしたくない。
だから、いついくか、さりげなく伝えたのだ。
きっと、諦めの悪いAなら、きっと
きてくれる。そう信じた。
……僕もバカだよなぁ、Aはもう、翔太くんの彼女なのに……。
心のどこかで、振られないかとか思っていた最低な僕。そんな僕は、最後に君と会うと言うのが許されていいのだろうか。
「……真冬、そろそろいこう。」
7:53と、数字は表している。8:00出発なので、残り七分だ。
お父さんが話を持ちかけ、僕ももう諦めようとくるっと飛行機に向かう方へ体を転換させる。
……バイバイ、A
君と会えなくて、すごく胸が苦しい。
最期に“好き”って言えなくて、ごめんね。
今まで、何もかもありがとう。
さようなら。
.
.
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「…………真冬ッ!」
あぁ、やっぱり、君は____
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つむぐ - やのさんの作品、どれも面白かったです!別垢になってもずっと応援してます!お疲れ様でした! (2020年8月11日 18時) (レス) id: 88b02305d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきか - 小説の最後の意味教えてほしいです (2019年10月27日 21時) (レス) id: f42ad21887 (このIDを非表示/違反報告)
ヽ(・∀・)やぁ - お久しぶりです。受験勉強で見れてないうちに...。新しい垢見つけたらコメントしますね!ずっとずっとやのさんの作品が大好きです! (2019年7月9日 6時) (レス) id: f277aaf274 (このIDを非表示/違反報告)
ここね(プロフ) - あなたの作品が大好きです!今回の作品も号泣させていただきましたw別アカになろうが必ず見つけ出します! (2019年6月16日 9時) (レス) id: f16806af0a (このIDを非表示/違反報告)
Rmd(プロフ) - 今作も遅くなりましたが、読ませて頂きました。最後のつっかえる感じがとても好きです。また、貴方の書く作品に出会えたら嬉しいなと思います。お疲れ様でした!!!(^^) (2019年5月5日 23時) (レス) id: 4a935f5230 (このIDを非表示/違反報告)
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