はっきりしてよ ページ26
-チョロ松
「きっ、嫌いなわけないから!」
「じゃあなんでそんなよそよそしいの?!あたしのこともずっと避けてるし、嫌いなら嫌いってはっきりしてよ!」
「だから嫌いじゃないんだって!!」
「あーもう!わけわかんない!!」
溢れる涙をぐしゃりと袖で拭った三美ちゃんはそのまま黙り込んでしまった。
(……もうだめだ)
また彼女を泣かせてしまった。
抱きしめたくてもできない。優しい言葉もかけてやれない。
守ってやりたいなんて思っていながらこんな単純なこともできないのか、僕は。
うつむき、何度も涙を拭う彼女の頭をそっと撫でてやろうと手を伸ばせば、彼女の右手に貼られた絆創膏が目に入った。
「…三美ちゃん、もしかして指ケガした?」
「……だったらなに」
「血滲んでる。こっち来て。貼りなおすから」
「別にいい」
「いいから」
いつものように嫌がる三美ちゃんの手をひいて棚から救急箱を取り出し、マキロンと絆創膏を用意した。
「消毒はした?」
「…してない。貼っただけ」
「やっぱり。ちゃんと消毒しないと。女の子なんだからさ。ほら、傷痕残るし」
「おんなのこ…」
「はい、おしまい」
救急箱を閉じて棚にしまえば、新しく絆創膏を貼った指をさすりながら「…あの、さ」と彼女がちらりと僕を見上げた。
「なんで…こんなに優しくするの?」
「なんでって…」
「嫌いなら、優しくしなくていいのに」
「…」
「…その方が、あたし…辛い」
「…………はっきりしてよ…」
勇気を出して言った言葉なんだと思う。声が微かに震えて上ずっていたから。
僕はどうする?また逃げ出す?ごまかしてこの場を乗り切る?
いや、だめだ。そんなんじゃこないだと同じだ。
なんて言えばいい?どうしたらこの気持ちが伝わる?
こんなとき、おそ松兄さんなら……?
『おまえは変わらなくていいよ』
ふと頭の中で、おそ松兄さんに相談したときに言われた言葉が脳裏をよぎった。
「…わかった。はっきりするから。三美ちゃん、こっち来て」
「えっ…?」
彼女の手を取り、ストック用の棚の前まで連れて行くと僕は段ボールからペンライトを大量にとりだして装着し、ポケットからスマホを出して
「…よし」
再生ボタンをタップして、音楽を流した。
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唯月 - 永久保存でお願いします(*^_^*) (2019年4月27日 19時) (レス) id: 0fc20caa15 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - その後のお話が読みたい! (2017年8月21日 18時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - かや梅さん» ありがとうございます!何回も最初から読んでくれたなんて本当嬉しいです…!ありがとうございます!番外編は考えていませんが、新作を準備していますので、もうしばらくお待ちください◎長い間読んでいただき、本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - ミサキ@さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて凄く嬉しいです!!続きは考えていないのですが、新しい作品を準備中なので、そちらを楽しみに待っいてください(^^)再度読んで頂けるなんて…本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 椿姫さん» コメントありがとうございます!無事に完結できました。その言葉が本当に嬉しいです。書いた甲斐がありました。長編でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M | 作成日時:2017年1月7日 14時