桃色 ページ19
-六美
「…トド松さん」
決心して、彼の名前を呼ぶ。
「なに?」と優しい声で返事をしてくれるトド松さんに今度は自分の方から抱きついて、強く背中に手をまわした。
「……好き」
「…」
「トド松さんが、好き。大好き」
「…」
「諦めるなんてできない」
蓋をしたはずの感情が、ひとつ、ふたつとこぼれていく。
手を繋ぎたい。
デートがしたい。
朝も夜も声が聞きたい。
私だけを見てほしい。
「もう遅いんだってことは分かってる。分かってるんだけど…っ
………私のことを好きになって欲しい」
声をつまらせながら本当の自分の気持ちを伝えれば、「六美ちゃん」と名前を呼ばれ、そっと見上げればトド松さんが笑みを浮かべながら親指で涙を拭ってくれた。
「やっと聞けた」
「…何が?」
「六美ちゃんの本当の気持ち」
ぽんぽんと私の頭を撫でながら「いじわるしちゃってごめん」とトド松さんはがさがさとポケットを探りスマホを出すと、私にスマホの画面を見せた。
「こ、れ…」
「一松兄さんと四美ちゃん、付き合うことになったんだ」
「えっ」
驚きが止まらない私にトド松さんは「ほんとごめんね」と苦笑いで頬をかく。
それでも信じられなくて「えっでも、トド松さんが四美と…」と言いかければ、「…それなんだけど、四美ちゃんの予行練習だったんだよね」とトド松さんがますます困った顔で笑った。
「六美ちゃんの優しいところ、僕は好きだけど、自分の気持ちを我慢してほしくはない」
「…」
「…僕も、六美ちゃんに嫌われてると思って怖かった。
だけど、このまま六美ちゃんが僕から離れていく方が怖かった」
「…だから、あんな…」
「無理やり抱き締めてごめん。一松兄さん達のことを知っていながら、黙っていじわるしてごめん」
「…」
「そこまでしてでも、六美ちゃんの素直な気持ちが聞きたかったんだ」
そう言ってトド松さんは少しの沈黙のあと、「…ねぇ」と足元に落としていた目線をふっとあげて私をまっすぐ見つめた。
「…僕は両想いだって確信できないと前に出れないチキンだし、かっこつけだし、全然男らしくもないんだけど。……僕の素直な気持ち、聞いて」
その言葉のあと、目の前がピンクで染まった。
ふわりと抱き締められた耳元で
「好き。」の言葉が響いた。
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唯月 - 永久保存でお願いします(*^_^*) (2019年4月27日 19時) (レス) id: 0fc20caa15 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - その後のお話が読みたい! (2017年8月21日 18時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - かや梅さん» ありがとうございます!何回も最初から読んでくれたなんて本当嬉しいです…!ありがとうございます!番外編は考えていませんが、新作を準備していますので、もうしばらくお待ちください◎長い間読んでいただき、本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - ミサキ@さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて凄く嬉しいです!!続きは考えていないのですが、新しい作品を準備中なので、そちらを楽しみに待っいてください(^^)再度読んで頂けるなんて…本当にありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 椿姫さん» コメントありがとうございます!無事に完結できました。その言葉が本当に嬉しいです。書いた甲斐がありました。長編でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございます! (2017年6月5日 14時) (レス) id: 23f0e390a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:M | 作成日時:2017年1月7日 14時