黒は戻らない【臨海林檎】 ページ19
はた、と顔を上げると、もうそこは神無の部屋では無かった。
……………きっと、思い出したからだろうな、過去を。
目線は重力に従ってじりじり下に落ちていく。辿り着いたのは自分の両手だった。
未だ地面に着いていた手を上げて掌を見る。掌は、あの時の泥が吹き出たように真っ黒だった。
私は黒だ。
何者にも染まらない気高い黒じゃない。汚い、どす黒い、余りにも醜い黒。
黒い絵の具は白を足せば徐々に薄く、
何処まで行っても所詮は
消えることの無い恐怖と罪悪感として。
忘れる事など、許されはしないのだ。
「………これは………彼奴の気配?……門か」
ぴんと糸を張ったような感覚が体を伝う。ソレは私が………………我が一等苦手とする者の気配だった。
何時もなら反対から会わぬように逃げ出すのだが、どうにも気になる点がある。
「………………霊が居るな……?」
感じ取ったのは…ユーリアと、二人の人間の気配、それに霊なるモノの波長。
人間の内一人の波長ととても良く似ていることから、兄弟又は双子と推測される。
「…………」
………ざわ、と胸騒ぎがした。危ない、ここに居てはいけない………
されども足はもう既に起き上がっている。もう、気配の方へと動き出してしまっている。
我の足は止まらない。
__________
初めに見つけたのはユーリアだった。何故か前よりも神々しさが増した気がするが、………気のせい……………として無理矢理こじつけた。
ユーリアは誰かと手を繋ぎながら歩いていた。そっと盗み見てみると、まだ幼い少年だった。その隣にはユーリアを警戒した様子の少年がもう一人、ぷかぷか浮いている。
何ら変わった事は無さそうだ…と安心する反面違和感がじわじわと襲ってくる。
どうしても気になりじっと三人を見ていると、いきなり手を繋がれている少年がばっと此方を振り向いた。
少年の目は、濁っていた。
憎悪と嫌悪で黒くなった完璧な笑みを貼り付けて此方を睨んでいた。
それと同時に霊の少年も此方を向く。
恐ろしいほどに二人の繋がりは強かった。
でも見えた。
真っ黒に見えた笑みも瞳も、まだ少しだけ歪だった。
……君達は灰色なんだね
どうか、
黒くはならないで
黒も灰色も、白には関係ない【痣路不】→←彼奴は誰ですか【SnowWhite】
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雛猫(キノコ)-元ヒナキノ子猫(プロフ) - 終わりました! (2018年9月9日 16時) (レス) id: cc81ae7131 (このIDを非表示/違反報告)
雛猫(キノコ)-元ヒナキノ子猫(プロフ) - 更新します(はぁと)← (2018年9月9日 14時) (レス) id: cc81ae7131 (このIDを非表示/違反報告)
赤黒 柚子見(プロフ) - 手直し終わりました (2018年8月18日 22時) (レス) id: 06134be286 (このIDを非表示/違反報告)
赤黒 柚子見(プロフ) - 更新じゃなくて手直しします (2018年8月18日 21時) (レス) id: 06134be286 (このIDを非表示/違反報告)
赤黒 柚子見(プロフ) - 少し遅くなったけど更新終わりました! (2018年8月17日 14時) (レス) id: 06134be286 (このIDを非表示/違反報告)
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