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特級仮想怨霊(名称未定)
その呪胎を非術師数名の目視で確認
緊急事態のため高専一年生三名を派遣
「仲間外れじゃない…」
一年生全員での初任務だと喜んでいたのが懐かしい
三人が伊地知さんに説明を受けているのを見て声をかければAさんは医務室で検査ですと置いて行かれた
何で私だけ
検査なんていつでもいいでしょ
もう治ったし(大噓)
「うるさい
怪我人は黙って診察受ける」
ぶつぶつ文句を言っていたら一喝された
私の右手に巻いてある包帯をスルスルと外していく硝子さん
露になる右手
膿んではないものの痛々しい傷が残る
特にひどい掌に治療を施そうと手を近づけた瞬間
バチィィイン
不完全な印が赤黒く光り反転術式を弾いた
「す、すいません」
「こちらこそすまない。医師が治療できないとはな」
硝子さんは悪くない
悪いのは私だ
再び巻かれる包帯
「失礼しました」
お辞儀をして医務室から出ていく
三人は任務中だろうか
この怪我さえなければ四人で行けた
シーンと静まり返った廊下を歩き自室に戻る
制服のままベッドに腰掛ける
包帯が巻かれた右手
巻かれていない左手
こんなものいらない
ないと存在価値はない
左手をじっと見つめ印をつぶすように握りしめた
そのままぼふっと横になれば自然とくる眠気
コンコン
ノック音で目を覚ます
ぼんやりとした頭と視界
カギは開いてますといえばドアが開かれた
「悠二が死んだ」
淡々と話す五条先生
二週間弱の付き合い
呪術師はいつ死ぬかわからない
己の強さと運の強さ両方がそろって初めて長生きできる
いちいち悲しんでいたら身が持たない
けれど横に流れる涙
「五条先生…
みんな私を置いてく
人を守るために私の術式はあるんでしょ
なのに_誰も救えない」
止まらない涙がシーツを濡らしていく
小刻みに震える体
「悟はいなくならない?私を置いていかない?」
幼い少女をあやすように頭を優しくなでる
涙が止まるまで
震えが止まるまで
「俺はいなくならないし置いていかない」
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作者名:呉沢 | 作成日時:2020年9月20日 16時