時覚学園【小説】

悪化【士乃】 ページ31

「うーん、あんたがそこまで言うなら、まぁ、気をつけはするけど……」


昴は嘘つくような奴じゃないしな。



「……そこはしっかり理由を説明するべきじゃないですか？」

「いや、今は言えないんだ……頼む、信じてくれ」

「信じた上での質問ですよ。
信じてなかったらハナから質問もしません。だから話してくれます？」

「…………」

「話す気がないと言うことですか？困りますよ、そんなの」



彩子が昴に近づき、服の襟を掴む。



「聞こえてる？さっさと全部話せって言ってんだよっ！」

「あ、彩子！」

「……なに？」

「お前、なんか今日おかしいぞ！少し落ち着け！」



彩子はしばらく虚ろな目で昴を見ると、正気に戻ったように慌てて襟から手を離した。



「す、すいません！私としたことが…………ほんとうにごめんなさい！」

「……いや、大丈夫だ」



先ほど『正気に戻ったように』と言ったが、彩子は元に戻ってはいない。

というか悪化している。





「……これは、家に直接謝りに行くべきですね。しかし……クッキー持っていった程度では駄目、なにかいいものないでしょうか……」


今の彩子の、『ついにハイライトが消えた死んだ魚みたいな目』では、なに貰っても怖いと思う。

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