生き別れの双子…は、人気歌い手…？【歌い手】

27 知らない事情 ページ28

「え、あ…。」


『パスタ作るね！』






何も言えなかった。

彼女の笑みの裏側に、触れてはいけないものがあった気がしたから。







『出来たら呼びにいきますね。』


「…うん、わかった。」







だから僕も、笑えた保証はないけれどそんな顔をした。


本当は、聞きたい。
僕が出した答えは正解なのかを。








だけど、嫌な予感がした。

彼女がもし歌い手なら、何故他のクラスメイトに明かしていないのだろう。





帰り道で坂田君に聞いたけど、

今日友達になったみんなは歌い手だということをクラスメイトでは止まらず、学年、全校生徒にまで伝わっているらしい。


けれどその中に、彼女は入っていなかった。









それが妙に気になってしまう。









「何か知られたくない理由がある…とか…？」



いやでも。僕の予想が間違っていなかったら、隠す必要なんてないのに…。



と思ってしまう。
やはり何か、それでも言えない事情があるのかも。









「…。」





とりあえず今は我慢しよう。きっといつか分かる…よね。

＿それより今は、全てを隠し通す。







何故なら


これは自分にとって、唯一の選択であり、たった一滴の小さな望みだから。

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