混沌(side:渉) ページ7
ある日いつものように、演劇部の部室に向かっていた。
相変わらず彼女との関係は変わらない。
話しかけても無視。軽く触れようものなら、鬼の形相で睨みつけられ、やがて逃げ去っていく。
＿＿＿でも、もう構わない。
だって自分を愛してくれる彼女は、ちゃんと存在している。
【あっち】に確かに存在しているのだ。
きっと自分を嫌っている彼女は、彼女の偽者で。
自分を愛してくれる彼女こそが、『現実』だ。
彼女に拒絶されても大丈夫。
それはただの夢なのだから。悪夢から覚めれば、素晴らしい現実が待っているのだ。
そう信じていた＿＿＿＿＿＿
＊＊＊＊＊＊＊＊
閉じかけていた物語の幕は、突如再び開き始めた。結末を見届けた観客が帰ろうとするのを、阻止するかのように。
これは夢。そう結論づけてハッピーエンドに向かっていた恋物語は、何の前触れもなく、大きな急展開を見せ始めたのだった。
部室に入るやいなや、私は思わず立ち止まった。
部室に無造作に置かれている、大きめのソファー。そこで彼女が眠っていた。あの恐ろしい形相を見せるとは想像もつかないような、穏やかな表情で。
彼女が眠っているところは初めて見た光景だった。よく見ると、床に台本が落ちていた。
劇の練習をしている途中で、疲れて眠ったのだろう。
「･･････くん。」
「･･････？」
今、彼女が何か言った気がする。
起こさないように彼女に近づいた。
今度は聞き逃さないように、耳を澄ました。
また何かを言うと確信しているわけではないが。
「渉、くん･･･」
「･････････！」
全身に電流が走ったような、衝撃が伝わった。
何で、どうして。
今眠っている彼女は、『夢』の彼女で。
私を忌み嫌っていて、名前を呼ぶなんて絶対にない事なのだ。
どうしてそんな彼女が。私の名前を？
聞き間違いだったのだろうか？いや、そんなはずはない。はっきり聞こえたのだ、自分の名前が。
震える手で、彼女の髪にそっと触れてみた。
全く手に絡まる事ないさらさらの髪は、入学した頃に比べて、随分長くなっていた。
起こさないように、なんて思っていた気持ちはどこにいったのか、髪から手を離し、今度は彼女の手を軽く握った。
確かな温もりを持ったその手は、夢か現か。
目の前にいる彼女は、本物か偽物か。
2つの世界が、複雑に絡み始めた。
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ユミカ(プロフ) - tomo☆さん» コメントありがとうございます〜！更新遅くてごめんなさい、頑張りますね！ (2017年6月11日 16時) (
レス) id: adf92d0f83 (このIDを非表示/違反報告)
tomo☆ - 面白いです！毎日この小説まで来て、更新されないかのぞいてるくらいです！ (2017年6月11日 8時) (レス) id: da2441fb80 (このIDを非表示/違反報告)
ユミカ(プロフ) - さくらんぼさん» コメントありがとうございます！私の趣味をぶち込んだかなり人を選ぶ話だと思っていたので、そのようなコメントをいただいて嬉しいです･･･！更新頑張ります！ (2017年5月30日 6時) (レス) id: 424560f613 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - コメント失礼します、初めて読ませて頂いたのですがとても素敵でした…！！日々樹渉メインのこの世界観とても好きです。これからも更新楽しみにしています！頑張ってください…！ (2017年5月30日 0時) (レス) id: 10e76afddf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユミカ | 作成日時：2017年5月14日 21時
