名前で呼ばせたい(side:渉) ページ5
「こんにちは。」
部室に行くと、彼女は先に来ていた。
挨拶をすると、彼女は大袈裟に肩を揺らしながら振り向いた。怯えたような目でこちらを一瞥した後、何も言わずに視線を自分からそらした。
＿＿＿最近、避けられているような気がする。
もちろん断言は出来ないけれど。
廊下ですれ違った時、プロデュース中、部活中。
彼女と会う機会はかなり多い方なのに、極端に会話が少ないのだ。
話しかけても曖昧な返事しか返ってこず、ひどい時には今のように無視される事もあった。
＿＿＿＿＿『現実』は厳しいものですね。
『物語』･･･フィクション、作り物。これは本当に都合がいい。自分の好きなように、物語を作り上げる事が出来るから。
自分が気に入らない人は、物語の中で好き勝手に痛めつける事が出来る。･･･ああ、逆らえないように服従させてもいいかもしれない。
自分が好きな人は、物語の中で自分に堕とす事が出来る。とっても簡単だ。呆れるほどに。
どれだけ相手が自分を嫌っていても、拒絶していても。物語上では自分が王様なのだ。何でも思い通りに出来る、最強の王様。
手の届かない人でも、いともたやすく自分のものに出来る。
『作り物』で満足出来たら良かったのかもしれませんね？
でもどうやら、私はかなり我儘だったようで。
所詮、物語は作り物。自分が作り上げた都合のいい妄想にすぎないのだ。
そう考えたら、一気に惨めな気分になるのだ。
毎晩毎晩、彼女を想って、彼女が自分を愛してくれるという物語を展開していく。ふわふわしたベッドの中で見る、理想通りの美しい夢は、虜になるのには十分な夢だけれど。
夢から覚めれば、それで終わり。待っているのは自分に笑顔すら見せてくれない、もう出会って3年目になるというのに名前すら呼んでくれないという非情な現実のみ。
＿＿＿こんな惨めな思いはもう、したくない。
そう思ってしまったのだ。
夢の中ではなく、現実で貴女に愛されたい。なんて我儘で愚かな願いを抱いてしまった。
そんな願いを叶える為の小さなステップ。
＿＿＿＿まずは名前ぐらい呼んでくださいよ、Aさん。
॑ ॑
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユミカ(プロフ) - tomo☆さん» コメントありがとうございます〜！更新遅くてごめんなさい、頑張りますね！ (2017年6月11日 16時) (
レス) id: adf92d0f83 (このIDを非表示/違反報告)
tomo☆ - 面白いです！毎日この小説まで来て、更新されないかのぞいてるくらいです！ (2017年6月11日 8時) (レス) id: da2441fb80 (このIDを非表示/違反報告)
ユミカ(プロフ) - さくらんぼさん» コメントありがとうございます！私の趣味をぶち込んだかなり人を選ぶ話だと思っていたので、そのようなコメントをいただいて嬉しいです･･･！更新頑張ります！ (2017年5月30日 6時) (レス) id: 424560f613 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - コメント失礼します、初めて読ませて頂いたのですがとても素敵でした…！！日々樹渉メインのこの世界観とても好きです。これからも更新楽しみにしています！頑張ってください…！ (2017年5月30日 0時) (レス) id: 10e76afddf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユミカ | 作成日時：2017年5月14日 21時
