2023 2/14 バレンタインデー ページ10
「今日は何の日？」
「……バレンタインの日…………！」
くっ……と悔しそうに今日は何の日かを言う。
俺の机の横には紙袋があり、その中には無造作に入れられたチョコばかり。
それを見て、結希はより一層悔しそうな顔をする。
「なんでそんなモテるの……！」
「ん〜、ツラじゃない？」
机を軽く叩きながらチョコをよこせと喚く。
正直言えば、俺はそんなに甘いの好きじゃないし、あげても良いんだけど。
俺が好きなのは和菓子。
洋菓子は、なんか違うっていうか。
「……あげようか？」
「いやお前が食えよ。踏みにじる気か」
なんだか可哀想になってきて、ついそんな事を言う。
そうすれば、いきなり真顔になって拒否する。
何を踏みにじることになるのかは聞かないでおくけど。
いや、消費しないわけにも行かないしなぁ……。
食べるか。
「あま……」
「うるせぇ文句言うんじゃねぇもらえるだけありがたいと思え」
「誰目線なのそれ」
「貰えない男目線ですけど？？」
身構えてはいたものの、あまりの甘さに少し顔をしかめてしまう。
それをうらめしそうに見ていた結希が早口でまくしたてる。
とはいえ甘いものは甘いのだ。
特に好きなわけでもないのに。
それが悪意ならまだいいんだけど、こうも純粋な好意だとなぁ。
「そんなチョコが貰えない結希くんには、はいコレ」
「施しはいらねえっ！」
「コレ俺が買ってきたやつ。友チョコってやつ？」
ゴソゴソとカバンからきれいに包装されたチョコの箱を渡す。
それを何と勘違いしたのか、受け取りを拒否する。
なにか誤解があるだろうと、そのまま買ったものであることと、理由を付け加えると、大人しく受け取ってくれる。
「友チョコ……」
「去年もあげたろうが。毎年友達っつって最初に思いついた相手に渡してんの」
今年もお前だったんだよ、なんて指をさせば、あっそ、なんて返される。
わざわざ説明してやったというのに、何だあの態度は。
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