追憶の日々 ページ6
夏が来た
嫌な夏が
「A…」
『あれ、きょー？』
アイスを咥えながら自転車を漕いでいたAは道端でぼーとしていた俺を見て暑そうに袖で汗を拭いながらこっちに来た
『なんかあったの？親を殺されたような目付きしてるけど』
「ほんま失礼やな」
でもこの言い合いはいつもAに根負けするから俺は諦めてポツリと呟いた
「最近…みんなから無視されるんや」
『ついにやらかした？』
「はっ倒すぞてめぇ」
冗談と笑うあいつに若干苛立ちながらも話を進める
「みんなから…らっだぁ達からも無視されるんや」
『えっらっだぁ達も？おかしくない？あんなにも仲良かったのに』
しるか俺が知りてぇわ
『ははぁん、状況は意味不だけど無視されて寂しいんだ〜きょーちゃんは』
「こいつに話さなきゃ良かったわ…」
けど軽く流して笑うこいつの行動に少し安堵している俺もいた
「お前は違うんだな」
『いやまずなぜそうなった？？？』
なんかのドッキリじゃないのと言うがこんな大規模なドッキリ要らへんわ
『まぁあんたが無視されようと迫害されようと私にゃ知ったこっちゃないからね』
アイスをガリガリ食べるも頭に響いたらしい、呻くあいつはなにも変わらなかった
『…まったく、仕方のない幼なじみね！ほれ乗りな』
さっきの馬鹿っぷりがどこ行ったのか意気揚々とまた自転車に跨り後ろを促される
「まったく、仕方のねぇ幼なじみだわ、乗ってやるぜ感謝しな」
『ならこのまま愛の
「ははっ！良いね〜お前となら行ってやらなくもない」
正直じゃないなと笑うあいつと漕ぎ揺れるこの景色を見て目を閉じた
男は気づかなかった
無視されたのではなく"人間自体"がいないことを
とうの昔に人間が絶滅していることも
自分は人間じゃないことも
いや気づいていた
それに目を背けたのだ
荒れ果てた大地で枯れた橘に寄り添うようにただ、ぶつぶつと呟く自分の姿に
これは狂気に飲み込まれ幻覚と追憶に縋る不老不死の男の物語
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橘:追憶、不老不死
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兆(プロフ) - 月夜さん» コメントありがとうございます！何度も書いては消してを繰り返してなんとか出来上がった作品なのでとても嬉しいです。のんしゅさんの作品もとても素晴らしいですよね！また今週上がるので是非☺️ (2022年7月9日 12時) (
レス) id: 9b683a0bf2 (このIDを非表示/違反報告)
のんしゅ(プロフ) - 月夜さん» ときさんの作品いいですよね分かります (2022年7月5日 20時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
月夜(プロフ) - 一話完結なのに伝えたいことがすべて伝わる文才羨ましい (2022年7月5日 0時) (レス) id: 257462e8a0 (このIDを非表示/違反報告)
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